コロナ禍で不祥事連続発生の信用保証協会に求められるコンプライアンス態勢の再構築

1.信用保証協会に求められるコンプライアンス態勢再構築

信用保証協会は、全国の都道府県と横浜市、川崎市、名古屋市及び岐阜市にはその市を対象範囲とする信用保証協会が存在し、全国で51の信用保証協会がある。

詳しくは、全国信用保証協会連合会サイト参照 https://www.zenshinhoren.or.jp/

日本政策金融公庫との間で再保険契約(中小企業信用保険)を結んでおり、代位弁済時に回収不能となった場合は部分填補を受ける。

なお、社会的には企業経営者の親族が連帯保証人にされ、悲惨なとばっちり破産を受ける社会問題があった。平成18年3月31日に「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」という通達が出されているが放置してきた国会の責任は重い。

これらを含めたコンプライアンス態勢として、最大のステークホルダーである中小企業の信頼を得る運営が今日求められている。

また、マスコミでしばしば報道されるように、地方公共団体の退職職員の天下り先になっている。かなりの割合の高さである。しかし、これは、下記の監督指針にもあるように、法定受託事務になっており、公正さを疑わせる恐れがある。

 例えば、朝日新聞「信用保証協会トップは天下り指定席 9割地方公務員OB」2010年3月12日の記事などがある。当職も記憶にあるが、悪びれず応答していた記憶がある。

1.信用保証協会に求められるコンプライアンス体制の特徴

(1)「信用保証協会向けの総合的な監督指針 令和4年1月版」(金融庁作成)は非常に参考になる。

I  基本的考え方
I -1 信用保証協会の監督に関する基本的考え方
I -2 監督部局の役割と監督事務の基本的考え方
I -2-1 監督部局の役割
I -2-2 監督事務の基本的考え方
I -3 監督指針の位置付け
II  業務の適切性
II -1 法令等遵守
II -1-1 不祥事件等に対する監督上の対応
II -1-2 役員による法令等違反行為への対応
II -1-2-1 意義
II -1-2-2 監督手法・対応
II -1-3 反社会的勢力による被害の防止
II -1-3-1 意義
II -1-3-2 主な着眼点
II -1-3-3 監督手法・対応
II -2 金融機関との連携等
II -2-1 意義
II -2-2 主な着眼点
II -2-3 監督手法・対応
III  認可等に関する事項
III -1 認可・承認事項の審査等
III -1-1 設立認可申請の審査事項
III -1-2 解散認可申請の審査事項
III -1-3 合併認可申請の審査事項
III -1-4 定款変更認可申請の審査事項
III -1-5 業務方法書変更認可申請の審査事項
III -1-6 有価証券の取得承認申請の審査事項等
III -1-7 その他必要な書類
III -2 予備審査
IV  報告等に関する事項
IV -1 事業報告書の受理
IV -2 信用保証協会台帳及び行政報告
IV -2-1 信用保証協会台帳
IV -2-2 行政報告
IV -3 保証料率の変更に関する留意事項
IV -4 関連会社
IV -4-1 関連会社の業務の範囲
IV -4-2 関連会社の適正化措置
IV -4-3 関連会社に関する留意事項
IV -5 法第35条に基づく経営改善計画書の策定に関する報告
IV -5-1 報告を求める協会の選定
IV -5-2 報告徴求に当たっての留意事項
IV -5-3 報告の進達等
IV -5-4 報告の再徴求等
V  一般監督に関する事項
V -1 法令解釈等の照会
V -2 信用保証協会に関する苦情等
V -3 決算経理
V -4 同一の中小企業者等に対する保証金額の最高限度
V -5 役員の選任及び役員の役割等に関する留意事項
V -5-1 役員構成
V -5-2 関係地方公共団体関係者の役員選任及び透明化
V -5-3 会長・理事長の常勤化
V -5-4 金融機関出身者の理事就任等
V -5-5 理事会の運営
V -5-6 理事会等の重要会議の審議記録の作成、保存
V -5-7 監事の常勤化及び選任
V -5-8 監事及び監事会の役割
V -6 資金の運用及び管理に関する留意事項
VI  行政処分を行う際の留意点
VI -1 行政処分(不利益処分)に関する基本的な事務の流れについて
VI -1-1 行政処分
VI -2 行政手続法との関係等
VI -3 意見交換制度
VI -4 関係地方公共団体の長が不利益処分等を行う場合の金融庁監督局(財務局含む。)及び中小企業庁(経済産業局含む。)との連携
VII  主要行等向けの総合的な監督指針及び中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針との関係

以上である。全国の信用保証協会では、これらの一つ一つの丁寧な検証が日々必要であろう。

(2) 信用保証協会のコンプライアンスで特に必要な法律

信用保証協会法、金融商品取引法 貸金業法 組織的犯罪処罰法 導入預金取締法 犯罪による収益の移転防止に関する法律など

(3)反社会的勢力に対する対応

(4)不祥事を出さない仕組み作りと不祥事発生時のクライシスマネジメント

2.信用保証協会の組織としてのコンプライアンス体制の構築を図るための事例演習

(1) クレーム発生(事例の提起と対処方法のセッション)

(2) 不正請求(取引先の接待と接待費の請求の可否)

(3) パワハラ(立場を利用した激励と言語的暴力の限界)

(4) セクハラ(女性はこのときにセクハラと感じる)

(5) 下請けいじめ(立場を利用した下請けいじめの事例)

(6) 個人情報保護法違反(企業の個人情報安全管理義務に対する世間の厳しい目)

(7) 集団での意思決定(全員一致で企業の為に社会規範を逸脱する)等々

3.信用保証協会で関連した不祥事と重要判例などの判例実務の紹介

最近では、コロナ禍で発生した下記のものが新しいが過去にもある。

群馬県信用保証協会の職員が195万円着服 懲戒解雇(2020/8/15産経新聞)、決裁を経ずに無断で複数の信用保証書発行した岩手県信用保証協会(同年7月発覚)等がある。

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