マイナンバー法への企業の対応方法と2024年秋施行改正法

1.マイナンバー法への企業の対応方法

 (1)マイナンバー法(番号法)と民間企業の対応

マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号))が成立した。

個人12ケタの番号通知が2015年10月に始まった。

これは、地方公共団体での税や社会保障分野での個人識別番号を利用を目的とするものであるが、民間企業への影響もかなり大きい。

企業は、その法の正しい理解を深め、対応方法を理解し施行に合わせた企業実務への準備をする必要がある。

(2)個人番号の扱いが必要になった

まず、企業では、従業員(アルバイトやパートを含む)の源泉徴収や社会保険などの行政手続き時にマイナンバーと法人番号を記載し、証券会社や保険会社の支払調書にもマイナンバーが必要なほか、外部の個人事業者に報酬を支払う際には提出されたマイナンバーを支払調書に記載する必要がある。

また、給与や人事労務管理システムを導入していれば、システムのバージョンアップや入れ替えが必要となる。

すでに、多くの企業では、「マイナンバー必要書類一覧」、「方針」、「取扱規程」、「委託契約書」等は作成済であろう。

これらをきちんと作成していない企業は所得税や医療保険等社会保障関係で相当な混乱が予想される。

2.マイナンバーに関連した知識・企業実務

例えば、そのようなマイナンバーに関する必要不可欠な知識項目をすこし列挙すると

(1)マイナンバー法と個人情報の保護に関する法律

個人情報全体の法体系

(2) マイナンバー制度の基本的理解

政府のHP「内閣官房 社会保障・税番号制度」は最重要情報源⇒デジタル庁へ

(3) 社内業務の明確化

主に総務部が担当になるが他の部署でもマイナンバーの扱いを知る必要がある

(4) 禁止行為の把握

個人情報保護法とは比べものにならない厳しい罰則への対応が必要

(5)社員教育

実務への影響が大きくアルバイトやパートを含めた理解が必要

(6) セキュリティの確認

不正利用への罰則も厳しく情報セキュリティの確認が必要

(7)スケジュールの確認

法の施行とそれに合わせた自社の対応が必要

3.法定調書一覧とマイナンバー記載

1)法定調書一覧とマイナンバー記載

法定調書の一覧と共通番号(マイナンバー)記載して提出

法定調書とマイナンバー記載しての提出するものは以下のものである。平成27年4月1日現在

法定調書とは、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」及び「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署に提出が義務づけられている資料である。

以下の61種類の法定調書がある。

(1)所得税法に規定するもの

1 給与所得の源泉徴収票
2 退職所得の源泉徴収票
3 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
4 不動産の使用料等の支払調書
5 不動産の譲受けの対価の支払調書
6 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
7 利子等の支払調書
8 国外公社債等の利子等の支払調書
9 配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書
10 国外投資信託等又は国外株式の配当等の支払調書
11 投資信託又は特定受益証券発行信託収益の分配の支払調書
12 オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書
13 配当等とみなす金額に関する支払調書
14 定期積金の給付補てん金等の支払調書
15 匿名組合契約等の利益の分配の支払調書
16 生命保険契約等の一時金の支払調書
17 生命保険契約等の年金の支払調書
18 損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書
19 損害保険契約等の年金の支払調書
20 保険等代理報酬の支払調書
21 無記名割引債の償還金の支払調書
22 非居住者等に支払われる組合契約に基づく利益の支払調書
23 非居住者等に支払われる人的役務提供事業の対価の支払調書
24 非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書
25 非居住者等に支払われる借入金の利子の支払調書
26 非居住者等に支払われる工業所有権の使用料等の支払調書
27 非居住者等に支払われる機械等の使用料の支払調書
28 非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書
29 非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書
30 株式等の譲渡の対価等の支払調書
31 交付金銭等の支払調書
32 信託受益権の譲渡の対価の支払調書
33 公的年金等の源泉徴収票
34 信託の計算書
35 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書
36 名義人受領の利子所得の調書
37 名義人受領の配当所得の調書
38 名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書
39 譲渡性預金の譲渡等に関する調書
40 新株予約権の行使に関する調書
41 株式無償割当てに関する調書
42 先物取引に関する支払調書
43 金地金等の譲渡の対価の支払調書
44 外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書

(2)相続税法に規定するもの

45 生命保険金・共済金受取人別支払調書
46 損害(死亡)保険金・共済金受取人別支払調書
47 退職手当金等受給者別支払調書
48 信託に関する受益者別(委託者別)調書

(3)租税特別措置法に規定するもの

49 上場証券投資信託等の償還金等の支払調書
50 特定新株予約権等・特定外国新株予約権の付与に関する調書
51 特定株式等・特定外国株式の異動状況に関する調書
52 特定口座年間取引報告書
53 非課税口座・未成年者口座年間取引報告書
54 特定振替国債等の譲渡対価の支払調書
55 特定振替国債等の償還金等の支払調書
56 教育資金管理契約の終了に関する調書
57 結婚・子育て資金管理契約の終了に関する調書

(4)国外送金等調書法「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」に規定するもの

58 国外送金等調書
59 国外財産調書
60 国外証券移管等調書
61 財産債務調書(平成28年1月1日から施行)

2)法定調書も含めた税関係マイナンバーの記載時期

① 所得税の申告書は、平成28年分の申告書から番号を記載。

② 個人住民税及び個人事業税の申告書は、平成29年度分の申告書から番号の記載が開始されるため、平成29年3月15日までに提出する申告書に番号を記載。

③ 法人税の申告書は、平成28年1月1日以降に開始する事業年度に係る申告書から番号を記載。例えば、3月決算法人であれば、29年3月決算に係る申告書から番号を記載

④ 法人住民税及び法人事業税の申告書についても法人税の申告書と同様。

⑤ 法定調書は、平成28年1月以降に金銭等の支払等が行われるものから、番号を記載。

例えば、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書については、平成28年1月以後に支払等が確定したものについて、支払を受ける者及び支払者の個人番号又は法人番号を記載。

「配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書」や「特定口座年間取引報告書」等の税法上告知義務が規定されている一部の調書で平成28年1月1日前に締結された「税法上告知したとみなされる取引」に基づき、同日以後に金銭等の支払等が行われるものに係る「番号」の告知及び本人確認については、同日から3年を経過した日以後の最初の金銭等の支払等の時までの間に行うことができるという猶予規定ある。

ただし、「給与所得の源泉徴収票」や「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」等、猶予規定が設けられていない法定調書については、平成28年1月以降の支払に係る法定調書提出する時までに個人番号又は法人番号の提供を受け、記載。

⑥ 支払報告書は、平成28年分の支払報告書から番号の記載が開始されるため、平成28年分の給与支払報告書であれば、平成29年1月31日までに提出する支払報告書から番号を記載。

⑦ 申請書・届出書は、平成28年1月1日以降に提出すべき申請書等から、番号を記載。
(国税庁HP参照)

4.マイナンバーの取得・管理に際しての基本事項チェック(中小企業・小規模組織等)

1)マイナンバーの取得・管理に際しての基本事項チェック(中小企業・小規模組織等)

(1)マイナンバーのチェックリスト

マイナンバーの導入に際し、事業者のみなさまは、社会保障や税の手続きのため、従業員の方々から マイナンバーを取得し、適切に管理・保管する必要があります。

従業員数の少ない事業者では、以下のチェックリストを参考にしてください。

(2)担当者の明確化と番号の取得

□ マイナンバーを従業員から取得する際には、利用目的(「源泉徴収票作成」「健康保険・厚生年金保険届出」「雇用保険届出」)を伝えましょう。

□ マイナンバーを扱う人を、あらかじめ決めておきましょう(給料や社会保険料を扱っている人など)。

□ マイナンバーを従業員から取得する際には、番号が間違っていないかの確認と身元の確認が必要です。

①顔写真の付いている「個人番号カード」か、

②マイナンバーが書いてある「通知カード」と「運転免許証」などで確認を行いましょう。

※マイナンバーカード(個人番号カード)見本


□ マイナンバーが記載された書類は、カギがかかる棚や引き出しに大切に保管するようにしましょう。無理にパソコンを購入する必要はありません。

2)取得したマイナンバーの管理・保管

□ 従業員の退職や契約の終了などでマイナンバーが必要なくなったら、細かく裁断するなどマイナンバーの書いてある書類を廃棄しましょう。パソコンに入っているマイナンバーも削除しましょう。

□ パソコンがインターネットに接続されている場合は、ウィルス対策ソフトを最新版に更新するなどセキュリティ対策を行いましょう。

※ 従業員で身元の確認が十分できている場合は、番号だけ確認してください。

※ アルバイトやパートの方も、マイナンバーの番号確認や身元確認が必要となります。

3)従業員の皆さんへの確認事項

□ 裏面を掲示版に貼るなどして、従業員の皆さんに何に使うかなど、マイナンバーの基本的なことを知ってもらいましょう。

5.マイナンバーとクラウドサービス(クラウド利用は委託になるか)個人情報委託漏えいの多さ

1)地方公共団体等で相次ぐ「委託先からの個人情報漏えい」

(1)京都市立病院の個人情報漏えい

いつも講演で話していることであるが、例えば京都市立病院で委託業者から個人情報1800件の入ったパソコンが紛失したと平成25年4月に発覚した。

会計システムの保守点検を業務委託している会社の社員が、点検作業のためデータを会社のパソコンにコピーし、病院から持ち出し、飲食店に立ち寄った際、車上荒らしに遭い、パソコンを盗まれたのである。

このような個人情報の流出は管理ミス型と並んで「委託型」で多いのである。

(2)マイナンバー漏えい

マイナンバーも十分に漏えいには注意する必要があろう。

そこで、自社ではマイナンバーそのものは扱わないでアウトソーシングしてマイナンバー関連業務は外部の業者に任せる趨勢になっているようである。

無べなるかな。

2)クラウディングサービスの利用は個人情報の委託になるのであろうか。

(1)PPCの見解

個人情報保護委員会は、委託ではないとしている。

なぜなら、委託を受けた事業者が当該契約内容を履行するに当たって個人番号をその内容に含む電子データを取り扱わないからである。

そこには、個人番号関係事務又は個人番号利用事務の全部又は一部の委託を受けていない時には、契約条項によって当該事業者が個人番号をその内容に含む電子データを取り扱わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場合等が考えられる。

(2)委託でないとしたときの個人情報の管理

よって、この場合には、クラウド利用者には、委託先の監督義務は課されない。

しかし、自ら果たすべき安全管理措置の一環として、クラウドサービス事業者内にあるデータについて、適切な安全管理措置を講ずる必要がある。

6.マイナンバー法における9つの刑事罰の新設と情報セキュリティの見直し必至

1)マイナンバー法における刑事罰と情報セキュリティ

(1)狙われるマイナンバー

最も狙っているのは、年間数百億の「オレオレ詐欺」損害を起こしている詐欺グル-プであろう。

暴力団等の裏社会で生きているものが垂涎の的にしている事は明確だ。

次に、ハッカー集団であろう。これは、国家的に動いている近隣の国もあろう。

そして、個人情報売買業者である。資産者は1人15万の相場さえついている。

その他にも、多数の予備軍がいる。

情報セキュリティはマッタなしである。

(2)刑事罰による漏えいの抑制

マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の第9章は、故意犯罰則規定がある。過失犯は処罰されない。過失は民事罰になる。

公務員等に主体が限定されているのが、

【第69条(情報提供ネットワークシステムに関する秘密漏えい)】、

 【第71条(職権濫用による文書等の収集)】、

 【第72条(委員会の委員等による秘密漏えい)】

である。

問題は、民間業者等にも適用のある【第67条(特定個人情報ファイルの不正提供)】、【第68条(個人番号の不正提供、盗用)】、第70条以下である。

個人情報の保護に関する法律と、雲泥の差がある厳しさである。

たとえば、摘発が最も多くなりそうなのが、第68条(個人番号の不正提供、盗用)のほかに

【第70条(詐欺行為等による情報取得)】である。

これは、人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為(詐欺等行為)、又は、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為その他の保有者の管理を害する行為でマイナンバーを取得した場合であるが、

3年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金、又はこれらの併科である。

個人番号の提供・盗用の罪(第68条)と同程度の非難に値すると考えられることから、同じ法定刑となっている。

他にも、【第73条(命令違反)】 は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金で、

個人情報の保護に関する法律では、同形態が「6月以下の懲役または30万以下の罰金」の低さであったのである。

【第74条(検査忌避等)】 は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金である。

また、これも摘発が増えそうなのが、

【第75条(通知カード及び個人番号カードの不正取得)】 である。

他人になりすましてその者の個人番号カードを取得する行為、虚偽の請求事由を記載して個人番号カードの再交付を受ける行為などが考えられている。

これは、第70条に当てはまらない顔見知りの窓口職員に懇願して交付を受ける場合や、買収や甘言によって交付を受ける場合などがある。

法定刑は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金である。

以上のうち、【第76条(国外犯)】でも処罰されるのは「第67条から第72条」までである。

最後に、【第77条(両罰規定)】がある。

これは、 法人の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第六十七条、第六十八条、第七十条又は第七十三条から第七十五条までの違反行為をしたときにその行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科されるのである。

2)マイナンバー法の罰則と情報セキュリティのバランス

これらの厳しい法定刑で特定個人情報であるマイナンバーを保護しようとしているが、ガイドラインにもあるように「取扱規定」、4つのセキュリティ「組織的、物理的、技術的、人的対策」は中小企業には配慮されているが、上記のように罰則は全く関係ない。

全ての企業等のマイナンバー実務で刑事罰を踏まえた情報セキュリティは十分に対策が練られているであろうか。

ソフトやハードにばっかり気を使って、頭(知恵)を使わないと易々とハッカー等にやられよう。

上記を参考にして第一号逮捕者又は被摘発者(摘発される企業)にならないようにしていただきたい。

マイナンバーのリスク管理(リスクマネジメント)ができていないと、上記の刑事罰に加えて、

「民事損害賠償請求」、「行政対応」、「マスコミ対策」、「ネットなどでのレピュテーション」等のリスクが現実化するであろう。

7.マイナンバー法における「本人確認」で、扶養親族の本人確認が必要な場合と不要な場合

1)マイナンバー法における「本人確認」で、扶養親族の本人確認が必要な場合と不要な場合

ここは、内閣府サイトやガイドラインでも非常に分かりにくいところである。

いろいろな書籍等の解説でも誤解が発生するような決めつけも見受けられる。

本人確認は、「番号確認」+「身元確認」で構成されているので、それを前提にすると

一応、最も慎重にやるには次のように解すべきであろうか。

2)税の扶養控除等申告書の提出

税の扶養控除等申告書の提出については、事業者への提出義務者はあくまで従業員であり、扶養親族のマイナンバーの本人確認も従業員が自己の責任で行うため、民間事業者が扶養親族

の本人確認を行う必要はないと解される。

3).国民年金の第3号被保険者の届出

国民年金の第3号被保険者の届出については、事業者への提出義務者は扶養親族であることから、扶養親族のマイナンバーの本人確認が必要になる。

このとき、本人確認として2つのパターンがあろう。

(ア)従業員が扶養親族の代理人になるパターン

この場合、扶養親族→(個人番号)→従業員(扶養親族の代理人)と番号が渡る際には

本人確認は必要はない。代理人が自己の責任で代理人を選んで依頼したのだから。

次に、従業員(扶養親族の代理人)→(個人番号)→会社と番号が渡る際に、会社は従業員

(扶養親族の代理人)に対して本人確認を行うことになろう。

つまり、代理権確認+代理人身元確認+本人番号確認 となろう。

(イ)従業員が会社の代理人になるパターン

この場合、扶養親族→(個人番号)→従業員(会社の代理人)と番号が渡る際に、従業員(会社の代理人)が扶養親族に対して本人確認を行う

つまり、本人番号確認+本人身元確認 である。

次に、従業員(会社の代理人)→(個人番号)→会社と番号が渡る際には本人確認は必要がなくなろう。

以上である。

企業のマイナンバー実務はすでにかなり混乱している。

上記を参考にしていただきたい。

◆マイナンバー法の改正とマイナンバー、マイナンバーカードの利用拡大。(2024秋に本格施行予定)

上記は、もうすでに令和5年4月1日現在、試行的に行われているものもある。この流れは止まらないであろう。簡単に確認しておくと、

(1)マイナンバーカードと健康保険証の一体化

 2024年秋には健康保険証が廃止されるので、1年間は保険証を有効にする経過措置がとられ、カードをなくした人や持っていない人が、保険診療を受けられるようにする1年間は有効な「資格確認書」が新たに発行される。紛失などで再交付が必要な場合は、申請から1週間以内でカードを発行する。1歳未満の乳児のみ、顔写真がないカードを発行するが、有効期限は、5歳の誕生日までとなる。

(2)マイナンバーの利用範囲拡大

 マイナンバー法で、マイナンバーを利用できるのは、「社会保障」、「税」、「災害対策」の3分野に限定されているが、法改正で、「国家資格に関する手続き」、「自動車に関わる登録」、「外国人の行政手続き」などの分野でも、マイナンバーが使えるようになる。美容師や建築士などの資格を更新する際、これまでは自治体などで戸籍謄本や住民票の写しなどを取得する必要があったが、マイナンバーカードを使ったオンライン申請が可能になる。それらの資格を管理する団体が、マイナンバーにひも付いた情報にアクセスできる「情報連携活用システム」を通じて個人情報を取得できるようになり、書類の添付が不要になる。また、すでに法律で規定された事務に「準ずる事務」であれば、法律を改正しなくても、マイナンバーの利用が可能になる。

(3)「公金受取口座」に関する新たな仕組みの導入

「公金受取口座」は、マイナンバーと一緒に登録することで、国からの給付金などを受け取ることができる口座で、現在、公的年金を受け取るために届け出ている銀行などの金融機関の口座を、「公金受取口座」として、登録する仕組みが新たに導入される。行政からの通知に対して、本人が同意しないという意思を示さなければ、公的年金などを受け取るために届け出ている銀行などの金融機関の口座が、「公金受取口座」に登録される。公的年金を受け取っていない人は、登録する口座をみずから指定し、マイナポータルなどから登録する。迅速な給付が可能になる。

◆マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)令和5年4月1日現在

平成二十五年法律第二十七号 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
目次
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 個人番号(第七条―第十六条)
第三章 個人番号カード(第十六条の二―第十八条の二)
第四章 特定個人情報の提供
第一節 特定個人情報の提供の制限等(第十九条・第二十条)
第二節 情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供(第二十一条―第二十六条)
第五章 特定個人情報の保護
第一節 特定個人情報保護評価等(第二十七条―第二十九条の四)
第二節 個人情報保護法の特例等(第三十条―第三十二条)
第六章 特定個人情報の取扱いに関する監督等(第三十三条―第三十八条)
第六章の二 機構処理事務等の実施に関する措置(第三十八条の二―第三十八条の十三)
第七章 法人番号(第三十九条―第四十二条)
第八章 雑則(第四十三条―第四十七条)
第九章 罰則(第四十八条―第五十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野に属する情報を照合してこれらが同一の者に係るものであるかどうかを確認することができるものとして整備された情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにするとともに、これにより、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図り、かつ、これらの者に対し申請、届出その他の手続を行い、又はこれらの者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにするために必要な事項を定めるほか、個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)の特例を定めることを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「行政機関」とは、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)第二条第八項に規定する行政機関をいう。
2 この法律において「独立行政法人等」とは、個人情報保護法第二条第九項に規定する独立行政法人等をいう。
3 この法律において「個人情報」とは、個人情報保護法第二条第一項に規定する個人情報をいう。
4 この法律において「個人情報ファイル」とは、個人情報保護法第六十条第二項に規定する個人情報ファイルであって行政機関等(個人情報保護法第二条第十一項に規定する行政機関等をいう。以下この項及び第五章第二節において同じ。)が保有するもの又は個人情報保護法第十六条第一項に規定する個人情報データベース等であって行政機関等以外の者が保有するものをいう。
5 この法律において「個人番号」とは、第七条第一項又は第二項の規定により、住民票コード(住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第七条第十三号に規定する住民票コードをいう。以下同じ。)を変換して得られる番号であって、当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別するために指定されるものをいう。
6 この法律において「本人」とは、個人番号によって識別される特定の個人をいう。
7 この法律において「個人番号カード」とは、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載され、本人の写真が表示され、かつ、これらの事項その他主務省令で定める事項(以下「カード記録事項」という。)が電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。第十八条において同じ。)により記録されたカードであって、この法律又はこの法律に基づく命令で定めるところによりカード記録事項を閲覧し、又は改変する権限を有する者以外の者による閲覧又は改変を防止するために必要なものとして主務省令で定める措置が講じられたものをいう。
8 この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第七条第一項及び第二項、第八条並びに第四十八条並びに附則第三条第一項から第三項まで及び第五項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。
9 この法律において「特定個人情報ファイル」とは、個人番号をその内容に含む個人情報ファイルをいう。
10 この法律において「個人番号利用事務」とは、行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者が第九条第一項から第三項までの規定によりその保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用して処理する事務をいう。
11 この法律において「個人番号関係事務」とは、第九条第四項の規定により個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を必要な限度で利用して行う事務をいう。
12 この法律において「個人番号利用事務実施者」とは、個人番号利用事務を処理する者及び個人番号利用事務の全部又は一部の委託を受けた者をいう。
13 この法律において「個人番号関係事務実施者」とは、個人番号関係事務を処理する者及び個人番号関係事務の全部又は一部の委託を受けた者をいう。
14 この法律において「情報提供ネットワークシステム」とは、行政機関の長等(行政機関の長、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)及び地方公共団体情報システム機構(以下「機構」という。)並びに第十九条第八号に規定する情報照会者及び情報提供者並びに同条第九号に規定する条例事務関係情報照会者及び条例事務関係情報提供者をいう。第七章を除き、以下同じ。)の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織であって、暗号その他その内容を容易に復元することができない通信の方法を用いて行われる第十九条第八号又は第九号の規定による特定個人情報の提供を管理するために、第二十一条第一項の規定に基づき内閣総理大臣が設置し、及び管理するものをいう。
15 この法律において「法人番号」とは、第三十九条第一項又は第二項の規定により、特定の法人その他の団体を識別するための番号として指定されるものをいう。

(基本理念)
第三条 個人番号及び法人番号の利用は、この法律の定めるところにより、次に掲げる事項を旨として、行われなければならない。
一 行政事務の処理において、個人又は法人その他の団体に関する情報の管理を一層効率化するとともに、当該事務の対象となる者を特定する簡易な手続を設けることによって、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化に資すること。
二 情報提供ネットワークシステムその他これに準ずる情報システムを利用して迅速かつ安全に情報の授受を行い、情報を共有することによって、社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資すること。
三 個人又は法人その他の団体から提出された情報については、これと同一の内容の情報の提出を求めることを避け、国民の負担の軽減を図ること。
四 個人番号を用いて収集され、又は整理された個人情報が法令に定められた範囲を超えて利用され、又は漏えいすることがないよう、その管理の適正を確保すること。
2 個人番号及び法人番号の利用に関する施策の推進は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、行政運営の効率化を通じた国民の利便性の向上に資することを旨として、社会保障制度、税制及び災害対策に関する分野における利用の促進を図るとともに、他の行政分野及び行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用の可能性を考慮して行われなければならない。
3 個人番号の利用に関する施策の推進は、個人番号カードが第一項第一号に掲げる事項を実現するために必要であることに鑑み、行政事務の処理における本人確認の簡易な手段としての個人番号カードの利用の促進を図るとともに、カード記録事項が不正な手段により収集されることがないよう配慮しつつ、行政事務以外の事務の処理において個人番号カードの活用が図られるように行われなければならない。
4 個人番号の利用に関する施策の推進は、情報提供ネットワークシステムが第一項第二号及び第三号に掲げる事項を実現するために必要であることに鑑み、個人情報の保護に十分配慮しつつ、社会保障制度、税制、災害対策その他の行政分野において、行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が迅速に特定個人情報の授受を行うための手段としての情報提供ネットワークシステムの利用の促進を図るとともに、これらの者が行う特定個人情報以外の情報の授受に情報提供ネットワークシステムの用途を拡大する可能性を考慮して行われなければならない。

(国の責務)
第四条 国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、個人番号及び法人番号の利用を促進するための施策を実施するものとする。
2 国は、教育活動、広報活動その他の活動を通じて、個人番号及び法人番号の利用に関する国民の理解を深めるよう努めるものとする。

(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、個人番号その他の特定個人情報の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、個人番号及び法人番号の利用に関し、国との連携を図りながら、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を実施するものとする。
(事業者の努力)
第六条 個人番号及び法人番号を利用する事業者は、基本理念にのっとり、国及び地方公共団体が個人番号及び法人番号の利用に関し実施する施策に協力するよう努めるものとする。

第二章 個人番号
(指定及び通知)
第七条 市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、住民基本台帳法第三十条の三第二項の規定により住民票に住民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、速やかに、次条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を通知しなければならない。
2 市町村長は、当該市町村(特別区を含む。以下同じ。)が備える住民基本台帳に記録されている者の個人番号が漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められるときは、政令で定めるところにより、その者の請求又は職権により、その者の従前の個人番号に代えて、次条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、速やかに、その者に対し、当該個人番号を通知しなければならない。
3 市町村長は、前二項の規定による通知をするときは、当該通知を受ける者が個人番号カードの交付を円滑に受けることができるよう、当該交付の手続に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
4 前三項に定めるもののほか、第一項又は第二項の規定による通知に関し必要な事項は、総務省令で定める。
(個人番号とすべき番号の生成)
第八条 市町村長は、前条第一項又は第二項の規定により個人番号を指定するときは、あらかじめ機構に対し、当該指定しようとする者に係る住民票に記載された住民票コードを通知するとともに、個人番号とすべき番号の生成を求めるものとする。
2 機構は、前項の規定により市町村長から個人番号とすべき番号の生成を求められたときは、政令で定めるところにより、次項の規定により設置される電子情報処理組織を使用して、次に掲げる要件に該当する番号を生成し、速やかに、当該市町村長に対し、通知するものとする。
一 他のいずれの個人番号(前条第二項の従前の個人番号を含む。)とも異なること。
二 前項の住民票コードを変換して得られるものであること。
三 前号の住民票コードを復元することのできる規則性を備えるものでないこと。
3 機構は、前項の規定により個人番号とすべき番号を生成し、並びに当該番号の生成及び市町村長に対する通知について管理するための電子情報処理組織を設置するものとする。
(利用範囲)
第九条 別表第一の上欄に掲げる行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者(法令の規定により同表の下欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。第四項において同じ。)は、同表の下欄に掲げる事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
2 地方公共団体の長その他の執行機関は、福祉、保健若しくは医療その他の社会保障、地方税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第四号に規定する地方税をいう。以下同じ。)又は防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定めるものの処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
3 法務大臣は、第十九条第八号又は第九号の規定による戸籍関係情報(戸籍又は除かれた戸籍(戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第百十九条の規定により磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)をもって調製されたものに限る。以下この項及び第四十五条の二第一項において同じ。)の副本に記録されている情報の電子計算機処理等(電子計算機処理(電子計算機を使用して行われる情報の入力、蓄積、編集、加工、修正、更新、検索、消去、出力又はこれらに類する処理をいう。)その他これに伴う政令で定める措置をいう。以下同じ。)を行うことにより作成することができる戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている者(以下この項において「戸籍等記録者」という。)についての他の戸籍等記録者との間の親子関係の存否その他の身分関係の存否に関する情報、婚姻その他の身分関係の形成に関する情報その他の情報のうち、第十九条第八号又は第九号の規定により提供するものとして法務省令で定めるものであって、情報提供用個人識別符号(同条第八号又は第九号の規定による特定個人情報の提供を管理し、及び当該特定個人情報を検索するために必要な限度で第二条第五項に規定する個人番号に代わって用いられる特定の個人を識別する符号であって、同条第八項に規定する個人番号であるものをいう。以下同じ。)をその内容に含むものをいう。以下同じ。)の提供に関する事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で情報提供用個人識別符号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
4 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十八条若しくは第百九十七条第一項、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第五十九条第一項、第三項若しくは第四項、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十七条、第二十九条第三項若しくは第九十八条第一項、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第九条の四の二第二項、第二十九条の二第六項若しくは第七項、第三十七条の十一の三第七項、第三十七条の十四第三十四項、第七十条の二の二第十九項若しくは第七十条の二の三第十六項、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第七十四条の十三の二若しくは第七十四条の十三の三、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百二十五条から第二百二十八条の三の二まで、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第七条又は内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(平成九年法律第百十号)第四条第一項若しくは第四条の三第一項その他の法令又は条例の規定により、別表第一の上欄に掲げる行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者又は地方公共団体の長その他の執行機関による第一項又は第二項に規定する事務の処理に関して必要とされる他人の個人番号を記載した書面の提出その他の他人の個人番号を利用した事務を行うものとされた者は、当該事務を行うために必要な限度で個人番号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。
5 前項の規定により個人番号を利用することができることとされている者のうち所得税法第二百二十五条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までに掲げる者は、激甚じん災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)第二条第一項に規定する激甚災害が発生したときその他これに準ずる場合として政令で定めるときは、デジタル庁令で定めるところにより、あらかじめ締結した契約に基づく金銭の支払を行うために必要な限度で個人番号を利用することができる。
6 前各項に定めるもののほか、第十九条第十三号から第十七号までのいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けた者は、その提供を受けた目的を達成するために必要な限度で個人番号を利用することができる。
(再委託)
第十条 個人番号利用事務又は個人番号関係事務(以下「個人番号利用事務等」という。)の全部又は一部の委託を受けた者は、当該個人番号利用事務等の委託をした者の許諾を得た場合に限り、その全部又は一部の再委託をすることができる。
2 前項の規定により個人番号利用事務等の全部又は一部の再委託を受けた者は、個人番号利用事務等の全部又は一部の委託を受けた者とみなして、第二条第十二項及び第十三項、前条第一項から第四項まで並びに前項の規定を適用する。
(委託先の監督)
第十一条 個人番号利用事務等の全部又は一部の委託をする者は、当該委託に係る個人番号利用事務等において取り扱う特定個人情報の安全管理が図られるよう、当該委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
(個人番号利用事務実施者等の責務)
第十二条 個人番号利用事務実施者及び個人番号関係事務実施者(以下「個人番号利用事務等実施者」という。)は、個人番号の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人番号の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
第十三条 個人番号利用事務実施者(第九条第三項の規定により情報提供用個人識別符号を利用する者を除く。次条第二項及び第十九条第一号において同じ。)は、本人又はその代理人及び個人番号関係事務実施者の負担の軽減並びに行政運営の効率化を図るため、同一の内容の情報が記載された書面の提出を複数の個人番号関係事務において重ねて求めることのないよう、相互に連携して情報の共有及びその適切な活用を図るように努めなければならない。
(提供の要求)
第十四条 個人番号利用事務等実施者(第九条第三項の規定により情報提供用個人識別符号を利用する者を除く。以下この項及び第十六条において同じ。)は、個人番号利用事務等を処理するために必要があるときは、本人又は他の個人番号利用事務等実施者に対し個人番号の提供を求めることができる。
2 個人番号利用事務実施者(政令で定めるものに限る。第十九条第五号において同じ。)は、個人番号利用事務を処理するために必要があるときは、住民基本台帳法第三十条の九から第三十条の十二までの規定により、機構に対し機構保存本人確認情報(同法第三十条の九に規定する機構保存本人確認情報をいう。第十九条第五号及び第四十八条において同じ。)の提供を求めることができる。
(提供の求めの制限)
第十五条 何人も、第十九条各号のいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けることができる場合を除き、他人(自己と同一の世帯に属する者以外の者をいう。第二十条において同じ。)に対し、個人番号の提供を求めてはならない。
(本人確認の措置)
第十六条 個人番号利用事務等実施者は、第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受けるときは、当該提供をする者から個人番号カードの提示を受けることその他その者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。
第三章 個人番号カード
(個人番号カードの発行等)
第十六条の二 機構は、政令で定めるところにより、住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする。
2 機構は、個人番号カードに関して、個人番号カードの作成並びに個人番号カードの作成及び運用に関する状況の管理その他総務省令で定める事務を行うものとする。
(個人番号カードの交付等)
第十七条 市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、前条第一項の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。この場合において、当該市町村長は、その者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。
2 個人番号カードの交付を受けている者は、住民基本台帳法第二十四条の二第一項に規定する最初の転入届をする場合には、当該最初の転入届と同時に、当該個人番号カードを市町村長に提出しなければならない。
3 前項の規定により個人番号カードの提出を受けた市町村長は、当該個人番号カードについて、カード記録事項の変更その他当該個人番号カードの適切な利用を確保するために必要な措置を講じ、これを返還しなければならない。
4 第二項の場合を除くほか、個人番号カードの交付を受けている者は、カード記録事項に変更があったときは、その変更があった日から十四日以内に、その旨をその者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の長(次項及び第七項並びに第十八条の二第三項において「住所地市町村長」という。)に届け出るとともに、当該個人番号カードを提出しなければならない。この場合においては、前項の規定を準用する。
5 個人番号カードの交付を受けている者は、当該個人番号カードを紛失したときは、直ちに、その旨を住所地市町村長に届け出なければならない。
6 個人番号カードは、その有効期間が満了した場合その他政令で定める場合には、その効力を失う。
7 個人番号カードの交付を受けている者は、当該個人番号カードの有効期間が満了した場合その他政令で定める場合には、政令で定めるところにより、当該個人番号カードを住所地市町村長に返納しなければならない。
8 前各項に定めるもののほか、個人番号カードの再交付の手続その他個人番号カードに関して市町村長及び個人番号カードの交付を受けている者が行う手続に関し必要な事項(以下この項において「再交付等に関する事項」という。)は総務省令で、個人番号カードの様式及び個人番号カードの有効期間その他個人番号カードに関し必要な事項(再交付等に関する事項を除く。)は主務省令で定める。
(個人番号カードの利用)
第十八条 個人番号カードは、第十六条の規定による本人確認の措置において利用するほか、次の各号に掲げる者が、条例(第二号の場合にあっては、政令)で定めるところにより、個人番号カードのカード記録事項が記録された部分と区分された部分に、当該各号に定める事務を処理するために必要な事項を電磁的方法により記録して利用することができる。この場合において、これらの者は、カード記録事項の漏えい、滅失又は毀損の防止その他のカード記録事項の安全管理を図るため必要なものとして内閣総理大臣及び総務大臣(第三十八条の八から第三十八条の十一まで及び第三十八条の十三において「主務大臣」という。)が定める基準に従って個人番号カードを取り扱わなければならない。
一 市町村の機関 地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務
二 特定の個人を識別して行う事務を処理する行政機関、地方公共団体、民間事業者その他の者であって政令で定めるもの 当該事務
(個人番号カードの発行に関する手数料)
第十八条の二 機構は、第十六条の二第一項の規定による個人番号カードの発行に係る事務に関し、機構が定める額の手数料を徴収することができる。
2 機構は、前項に規定する手数料の額を定め、又はこれを変更しようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない。
3 機構は、第一項の手数料の徴収の事務を住所地市町村長に委託することができる。

第四章 特定個人情報の提供
第一節 特定個人情報の提供の制限等
(特定個人情報の提供の制限)
第十九条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。
一 個人番号利用事務実施者が個人番号利用事務を処理するために必要な限度で本人若しくはその代理人又は個人番号関係事務実施者に対し特定個人情報を提供するとき(個人番号利用事務実施者が、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第二十九条第一項、厚生年金保険法第百条の二第五項その他の政令で定める法律の規定により本人の資産又は収入の状況についての報告を求めるためにその者の個人番号を提供する場合にあっては、銀行その他の政令で定める者に対し提供するときに限る。)。
二 個人番号関係事務実施者が個人番号関係事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき(第十二号に規定する場合を除く。)。
三 本人又はその代理人が個人番号利用事務等実施者に対し、当該本人の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。
四 一の使用者等(使用者、法人又は国若しくは地方公共団体をいう。以下この号において同じ。)における従業者等(従業者、法人の業務を執行する役員又は国若しくは地方公共団体の公務員をいう。以下この号において同じ。)であった者が他の使用者等における従業者等になった場合において、当該従業者等の同意を得て、当該一の使用者等が当該他の使用者等に対し、その個人番号関係事務を処理するために必要な限度で当該従業者等の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。
五 機構が第十四条第二項の規定により個人番号利用事務実施者に機構保存本人確認情報を提供するとき。
六 特定個人情報の取扱いの全部若しくは一部の委託又は合併その他の事由による事業の承継に伴い特定個人情報を提供するとき。
七 住民基本台帳法第三十条の六第一項の規定その他政令で定める同法の規定により特定個人情報を提供するとき。
八 別表第二の第一欄に掲げる者(法令の規定により同表の第二欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。以下「情報照会者」という。)が、政令で定めるところにより、同表の第三欄に掲げる者(法令の規定により同表の第四欄に掲げる特定個人情報の利用又は提供に関する事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。以下「情報提供者」という。)に対し、同表の第二欄に掲げる事務を処理するために必要な同表の第四欄に掲げる特定個人情報(情報提供者の保有する特定個人情報ファイルに記録されたものに限る。)の提供を求めた場合において、当該情報提供者が情報提供ネットワークシステムを使用して当該特定個人情報を提供するとき。
九 条例事務関係情報照会者(第九条第二項の規定に基づき条例で定める事務のうち別表第二の第二欄に掲げる事務に準じて迅速に特定個人情報の提供を受けることによって効率化を図るべきものとして個人情報保護委員会規則で定めるものを処理する地方公共団体の長その他の執行機関であって個人情報保護委員会規則で定めるものをいう。第二十六条において同じ。)が、政令で定めるところにより、条例事務関係情報提供者(当該事務の内容に応じて個人情報保護委員会規則で定める個人番号利用事務実施者をいう。以下この号及び同条において同じ。)に対し、当該事務を処理するために必要な同表の第四欄に掲げる特定個人情報であって当該事務の内容に応じて個人情報保護委員会規則で定めるもの(条例事務関係情報提供者の保有する特定個人情報ファイルに記録されたものに限る。)の提供を求めた場合において、当該条例事務関係情報提供者が情報提供ネットワークシステムを使用して当該特定個人情報を提供するとき。
十 国税庁長官が都道府県知事若しくは市町村長に又は都道府県知事若しくは市町村長が国税庁長官若しくは他の都道府県知事若しくは市町村長に、地方税法第四十六条第四項若しくは第五項、第四十八条第七項、第七十二条の五十八、第三百十七条又は第三百二十五条の規定その他政令で定める同法又は国税(国税通則法第二条第一号に規定する国税をいう。以下同じ。)に関する法律の規定により国税又は地方税に関する特定個人情報を提供する場合において、当該特定個人情報の安全を確保するために必要な措置として政令で定める措置を講じているとき。
十一 地方公共団体の機関が、条例で定めるところにより、当該地方公共団体の他の機関に、その事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき。
十二 社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二条第五項に規定する振替機関等(以下この号において単に「振替機関等」という。)が同条第一項に規定する社債等(以下この号において単に「社債等」という。)の発行者(これに準ずる者として政令で定めるものを含む。)又は他の振替機関等に対し、これらの者の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織であって、社債等の振替を行うための口座が記録されるものを利用して、同法又は同法に基づく命令の規定により、社債等の振替を行うための口座の開設を受ける者が第九条第四項に規定する書面(所得税法第二百二十五条第一項(第一号、第二号、第八号又は第十号から第十二号までに係る部分に限る。)の規定により税務署長に提出されるものに限る。)に記載されるべき個人番号として当該口座を開設する振替機関等に告知した個人番号を含む特定個人情報を提供する場合において、当該特定個人情報の安全を確保するために必要な措置として政令で定める措置を講じているとき。
十三 第三十五条第一項の規定により求められた特定個人情報を個人情報保護委員会(以下「委員会」という。)に提供するとき。
十四 第三十八条の七第一項の規定により求められた特定個人情報を総務大臣に提供するとき。
十五 各議院若しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百四条第一項(同法第五十四条の四第一項において準用する場合を含む。)若しくは議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十五号)第一条の規定により行う審査若しくは調査、訴訟手続その他の裁判所における手続、裁判の執行、刑事事件の捜査、租税に関する法律の規定に基づく犯則事件の調査又は会計検査院の検査(第三十六条において「各議院審査等」という。)が行われるとき、その他政令で定める公益上の必要があるとき。
十六 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき。
十七 その他これらに準ずるものとして個人情報保護委員会規則で定めるとき。
(収集等の制限)
第二十条 何人も、前条各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報(他人の個人番号を含むものに限る。)を収集し、又は保管してはならない。
第二節 情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供
(情報提供ネットワークシステム)
第二十一条 内閣総理大臣は、委員会と協議して、情報提供ネットワークシステムを設置し、及び管理するものとする。
2 内閣総理大臣は、情報照会者から第十九条第八号の規定により特定個人情報の提供の求めがあったときは、次に掲げる場合を除き、政令で定めるところにより、情報提供ネットワークシステムを使用して、情報提供者に対して特定個人情報の提供の求めがあった旨を通知しなければならない。
一 情報照会者、情報提供者、情報照会者の処理する事務又は当該事務を処理するために必要な特定個人情報の項目が別表第二に掲げるものに該当しないとき。
二 当該特定個人情報が記録されることとなる情報照会者の保有する特定個人情報ファイル又は当該特定個人情報が記録されている情報提供者の保有する特定個人情報ファイルについて、第二十八条(第三項及び第五項を除く。)の規定に違反する事実があったと認めるとき。
(情報提供用個人識別符号の取得)
第二十一条の二 情報照会者又は情報提供者(以下この条において「情報照会者等」という。)は、情報提供用個人識別符号を内閣総理大臣から取得することができる。
2 前項の規定による情報提供用個人識別符号の取得は、政令で定めるところにより、情報照会者等が取得番号(当該取得に関し割り当てられた番号であって、当該情報提供用個人識別符号により識別しようとする特定の個人ごとに異なるものとなるように割り当てられることにより、当該特定の個人を識別できるもののうち、個人番号又は住民票コードでないものとしてデジタル庁令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)を、機構(第九条第三項の法務大臣である情報提供者にあっては、当該個人の本籍地の市町村長及び機構)を通じて内閣総理大臣に対して通知し、及び内閣総理大臣が当該取得番号と共に当該情報提供用個人識別符号を、当該情報照会者等に対して通知する方法により行うものとする。
3 情報照会者等、内閣総理大臣、機構及び前項の市町村長は、第一項の規定による情報提供用個人識別符号の取得に係る事務を行う目的の達成に必要な範囲を超えて、取得番号を保有してはならない。
4 前項に規定する者は、同項に規定する目的以外の目的のために取得番号を自ら利用してはならない。
5 第十九条(第六号及び第十三号から第十七号までに係る部分に限る。)の規定は、第三項に規定する者による取得番号の提供について準用する。この場合において、同条中「次の」とあるのは「第二十一条の二第二項の規定による通知を行う場合及び次の」と、同条第十三号中「第三十五条第一項」とあるのは「第二十一条の二第八項において準用する第三十五条第一項」と読み替えるものとする。
6 前項(次項において準用する場合を含む。)において準用する第十九条(第六号及び第十三号から第十七号までに係る部分に限る。)の規定により取得番号の提供を受けた者は、その提供を受けた目的の達成に必要な範囲を超えて、当該取得番号を保有してはならない。
7 第四項及び第五項の規定は、前項に規定する者について準用する。この場合において、第四項中「同項に規定する」とあるのは、「その提供を受けた」と読み替えるものとする。
8 第六章の規定は、取得番号の取扱いについて準用する。この場合において、第三十三条中「個人番号利用事務等実施者」とあるのは「第二十一条の二第三項又は第六項に規定する者」と、第三十六条中「第十九条第十五号」とあるのは「第二十一条の二第五項(同条第七項において準用する場合を含む。)において準用する第十九条第十五号」と読み替えるものとする。
(特定個人情報の提供)
第二十二条 情報提供者は、第十九条第八号の規定により特定個人情報の提供を求められた場合において、当該提供の求めについて第二十一条第二項の規定による内閣総理大臣からの通知を受けたときは、政令で定めるところにより、情報照会者に対し、当該特定個人情報を提供しなければならない。
2 前項の規定による特定個人情報の提供があった場合において、他の法令の規定により当該特定個人情報と同一の内容の情報を含む書面の提出が義務付けられているときは、当該書面の提出があったものとみなす。
(情報提供等の記録)
第二十三条 情報照会者及び情報提供者は、第十九条第八号の規定により特定個人情報の提供の求め又は提供があったときは、次に掲げる事項を情報提供ネットワークシステムに接続されたその者の使用する電子計算機に記録し、当該記録を政令で定める期間保存しなければならない。
一 情報照会者及び情報提供者の名称
二 提供の求めの日時及び提供があったときはその日時
三 特定個人情報の項目
四 前三号に掲げるもののほか、デジタル庁令で定める事項
2 前項に規定する事項のほか、情報照会者及び情報提供者は、当該特定個人情報の提供の求め又は提供の事実が次の各号のいずれかに該当する場合には、その旨を情報提供ネットワークシステムに接続されたその者の使用する電子計算機に記録し、当該記録を同項に規定する期間保存しなければならない。
一 個人情報保護法第七十八条第一項(個人情報保護法第百二十五条第二項の規定によりみなして適用する場合を含む。次号において同じ。)に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。
二 第三十一条第三項において準用する個人情報保護法第七十八条第一項に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。
3 内閣総理大臣は、第十九条第八号の規定により特定個人情報の提供の求め又は提供があったときは、前二項に規定する事項を情報提供ネットワークシステムに記録し、当該記録を第一項に規定する期間保存しなければならない。
(秘密の管理)
第二十四条 内閣総理大臣並びに情報照会者及び情報提供者は、情報提供等事務(第十九条第八号の規定による特定個人情報の提供の求め又は提供に関する事務をいう。以下この条及び次条において同じ。)に関する秘密について、その漏えいの防止その他の適切な管理のために、情報提供ネットワークシステム並びに情報照会者及び情報提供者が情報提供等事務に使用する電子計算機の安全性及び信頼性を確保することその他の必要な措置を講じなければならない。
(秘密保持義務)
第二十五条 情報提供等事務又は情報提供ネットワークシステムの運営に関する事務に従事する者又は従事していた者は、その業務に関して知り得た当該事務に関する秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(第十九条第九号の規定による特定個人情報の提供)
第二十六条 第二十一条(第一項を除く。)から前条までの規定は、第十九条第九号の規定による条例事務関係情報照会者による特定個人情報の提供の求め及び条例事務関係情報提供者による特定個人情報の提供について準用する。この場合において、第二十一条第二項第一号中「別表第二に掲げる」とあるのは「第十九条第九号の個人情報保護委員会規則で定める」と、第二十二条第一項中「ならない」とあるのは「ならない。ただし、第十九条第九号の規定により提供することができる特定個人情報の範囲が条例により限定されている地方公共団体の長その他の執行機関が、個人情報保護委員会規則で定めるところによりあらかじめその旨を委員会に申し出た場合において、当該提供の求めに係る特定個人情報が当該限定された特定個人情報の範囲に含まれないときは、この限りでない」と、同条第二項中「法令」とあるのは「条例」と、第二十四条中「情報提供等事務(第十九条第八号」とあるのは「条例事務関係情報提供等事務(第十九条第九号」と、「情報提供等事務に」とあるのは「条例事務関係情報提供等事務に」と、前条中「情報提供等事務」とあるのは「条例事務関係情報提供等事務」と読み替えるものとする。

第五章 特定個人情報の保護
第一節 特定個人情報保護評価等
(特定個人情報ファイルを保有しようとする者に対する指針)
第二十七条 委員会は、特定個人情報の適正な取扱いを確保するため、特定個人情報ファイルを保有しようとする者が、特定個人情報保護評価(特定個人情報の漏えいその他の事態の発生の危険性及び影響に関する評価をいう。)を自ら実施し、これらの事態の発生を抑止することその他特定個人情報を適切に管理するために講ずべき措置を定めた指針(次項及び次条第三項において単に「指針」という。)を作成し、公表するものとする。
2 委員会は、個人情報の保護に関する技術の進歩及び国際的動向を踏まえ、少なくとも三年ごとに指針について再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
(特定個人情報保護評価)
第二十八条 行政機関の長等は、特定個人情報ファイル(専ら当該行政機関の長等の職員又は職員であった者の人事、給与又は福利厚生に関する事項を記録するものその他の個人情報保護委員会規則で定めるものを除く。以下この条において同じ。)を保有しようとするときは、当該特定個人情報ファイルを保有する前に、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を評価した結果を記載した書面(以下この条において「評価書」という。)を公示し、広く国民の意見を求めるものとする。当該特定個人情報ファイルについて、個人情報保護委員会規則で定める重要な変更を加えようとするときも、同様とする。
一 特定個人情報ファイルを取り扱う事務に従事する者の数
二 特定個人情報ファイルに記録されることとなる特定個人情報の量
三 行政機関の長等における過去の個人情報ファイルの取扱いの状況
四 特定個人情報ファイルを取り扱う事務の概要
五 特定個人情報ファイルを取り扱うために使用する電子情報処理組織の仕組み及び電子計算機処理等の方式
六 特定個人情報ファイルに記録された特定個人情報を保護するための措置
七 前各号に掲げるもののほか、個人情報保護委員会規則で定める事項
2 前項前段の場合において、行政機関の長等は、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、同項前段の規定により得られた意見を十分考慮した上で評価書に必要な見直しを行った後に、当該評価書に記載された特定個人情報ファイルの取扱いについて委員会の承認を受けるものとする。当該特定個人情報ファイルについて、個人情報保護委員会規則で定める重要な変更を加えようとするときも、同様とする。
3 委員会は、評価書の内容、第三十五条第一項の規定により得た情報その他の情報から判断して、当該評価書に記載された特定個人情報ファイルの取扱いが指針に適合していると認められる場合でなければ、前項の承認をしてはならない。
4 行政機関の長等は、第二項の規定により評価書について承認を受けたときは、速やかに当該評価書を公表するものとする。
5 前項の規定により評価書が公表されたときは、個人情報保護法第七十四条第一項の規定による通知があったものとみなす。
6 行政機関の長等は、評価書の公表を行っていない特定個人情報ファイルに記録された情報を第十九条第八号若しくは第九号の規定により提供し、又は当該特定個人情報ファイルに記録されることとなる情報の提供をこれらの規定により求めてはならない。
(特定個人情報ファイルの作成の制限)
第二十九条 個人番号利用事務等実施者その他個人番号利用事務等に従事する者は、第十九条第十三号から第十七号までのいずれかに該当して特定個人情報を提供し、又はその提供を受けることができる場合を除き、個人番号利用事務等を処理するために必要な範囲を超えて特定個人情報ファイルを作成してはならない。
(研修の実施)
第二十九条の二 行政機関の長等は、特定個人情報ファイルを保有し、又は保有しようとするときは、特定個人情報ファイルを取り扱う事務に従事する者に対して、政令で定めるところにより、特定個人情報の適正な取扱いを確保するために必要なサイバーセキュリティ(サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)第二条に規定するサイバーセキュリティをいう。第三十二条において同じ。)の確保に関する事項その他の事項に関する研修を行うものとする。
(委員会による検査等)
第二十九条の三 特定個人情報ファイルを保有する行政機関、独立行政法人等及び機構は、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、定期的に、当該特定個人情報ファイルに記録された特定個人情報の取扱いの状況について委員会による検査を受けるものとする。
2 特定個人情報ファイルを保有する地方公共団体及び地方独立行政法人は、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、定期的に、委員会に対して当該特定個人情報ファイルに記録された特定個人情報の取扱いの状況について報告するものとする。
(特定個人情報の漏えい等に関する報告等)
第二十九条の四 個人番号利用事務等実施者は、特定個人情報ファイルに記録された特定個人情報の漏えい、滅失、毀損その他の特定個人情報の安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を委員会に報告しなければならない。ただし、当該個人番号利用事務等実施者が、他の個人番号利用事務等実施者から当該個人番号利用事務等の全部又は一部の委託を受けた場合であって、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を当該他の個人番号利用事務等実施者に通知したときは、この限りでない。
2 前項に規定する場合には、個人番号利用事務等実施者(同項ただし書の規定による通知をした者を除く。)は、本人に対し、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を通知しなければならない。ただし、本人への通知が困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
第二節 個人情報保護法の特例等
(個人情報保護法の特例)
第三十条 行政機関等(個人情報保護法第百二十五条第二項の規定により個人情報保護法第二条第十一項第三号に規定する独立行政法人等又は同項第四号に規定する地方独立行政法人とみなされる個人情報保護法第五十八条第一項各号に掲げる者(次条第一項において「みなし独立行政法人等」という。)を含む。)が保有し、又は保有しようとする特定個人情報(第二十三条(第二十六条において準用する場合を含む。)に規定する記録に記録されたものを除く。)に関しては、個人情報保護法第六十九条第二項第二号から第四号まで及び第八十八条の規定は適用しないものとし、個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。
(情報提供等の記録についての特例)
第三十一条 行政機関等(みなし独立行政法人等を含む。)が保有し、又は保有しようとする第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された特定個人情報に関しては、個人情報保護法第六十九条第二項から第四項まで、第七十条、第八十五条、第八十八条、第九十六条及び第五章第四節第三款の規定(みなし独立行政法人等については、個人情報保護法第八十五条、第八十八条、第九十六条及び第五章第四節第三款の規定)は適用しないものとし、個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。
(特定個人情報の保護を図るための連携協力)
第三十二条 委員会は、特定個人情報の保護を図るため、サイバーセキュリティの確保に関する事務を処理するために内閣官房に置かれる組織と情報を共有すること等により相互に連携を図りながら協力するものとする。

第六章 特定個人情報の取扱いに関する監督等
(指導及び助言)
第三十三条 委員会は、この法律の施行に必要な限度において、個人番号利用事務等実施者に対し、特定個人情報の取扱いに関し、必要な指導及び助言をすることができる。
(勧告及び命令)
第三十四条 委員会は、特定個人情報の取扱いに関して法令の規定に違反する行為が行われた場合において、特定個人情報の適正な取扱いの確保のために必要があると認めるときは、当該違反行為をした者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。
2 委員会は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3 委員会は、前二項の規定にかかわらず、特定個人情報の取扱いに関して法令の規定に違反する行為が行われた場合において、個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該違反行為をした者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。
(報告及び立入検査)
第三十五条 委員会は、この法律の施行に必要な限度において、特定個人情報を取り扱う者その他の関係者に対し、特定個人情報の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該特定個人情報を取り扱う者その他の関係者の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、特定個人情報の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(適用除外)
第三十六条 前三条の規定は、各議院審査等が行われる場合又は第十九条第十五号の政令で定める場合のうち各議院審査等に準ずるものとして政令で定める手続が行われる場合における特定個人情報の提供及び提供を受け、又は取得した特定個人情報の取扱いについては、適用しない。
(措置の要求)
第三十七条 委員会は、個人番号その他の特定個人情報の取扱いに利用される情報提供ネットワークシステムその他の情報システムの構築及び維持管理に関し、費用の節減その他の合理化及び効率化を図った上でその機能の安全性及び信頼性を確保するよう、内閣総理大臣その他の関係行政機関の長に対し、必要な措置を実施するよう求めることができる。
2 委員会は、前項の規定により同項の措置の実施を求めたときは、同項の関係行政機関の長に対し、その措置の実施状況について報告を求めることができる。
(内閣総理大臣に対する意見の申出)
第三十八条 委員会は、内閣総理大臣に対し、その所掌事務の遂行を通じて得られた特定個人情報の保護に関する施策の改善についての意見を述べることができる。
第六章の二 機構処理事務等の実施に関する措置
(機構処理事務管理規程)
第三十八条の二 機構は、この法律の規定により機構が処理する事務(以下「機構処理事務」という。)の実施に関し総務省令で定める事項について機構処理事務管理規程を定め、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 総務大臣は、前項の規定により認可をした機構処理事務管理規程が機構処理事務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、機構に対し、これを変更すべきことを命ずることができる。
(機構処理事務特定個人情報等の安全確保)
第三十八条の三 機構は、機構処理事務において取り扱う特定個人情報その他の総務省令で定める情報(以下この条及び次条第二項において「機構処理事務特定個人情報等」という。)の電子計算機処理等を行うに当たっては、機構処理事務特定個人情報等の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の機構処理事務特定個人情報等の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
2 前項の規定は、機構から機構処理事務特定個人情報等の電子計算機処理等の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者が受託した業務を行う場合について準用する。
(機構の役職員等の秘密保持義務)
第三十八条の三の二 機構の役員若しくは職員(地方公共団体情報システム機構法(平成二十五年法律第二十九号)第二十七条第一項に規定する機構処理事務特定個人情報等保護委員会の委員を含む。)又はこれらの職にあった者は、機構処理事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2 機構から機構処理事務特定個人情報等の電子計算機処理等の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、その委託された業務に関して知り得た機構処理事務特定個人情報等に関する秘密又は機構処理事務特定個人情報等の電子計算機処理等に関する秘密を漏らしてはならない。
(帳簿の備付け)
第三十八条の四 機構は、総務省令で定めるところにより、機構処理事務に関する事項で総務省令で定めるものを記載した帳簿を備え、保存しなければならない。
(報告書の公表)
第三十八条の五 機構は、毎年少なくとも一回、機構処理事務の実施の状況について、総務省令で定めるところにより、報告書を作成し、これを公表しなければならない。
(監督命令)
第三十八条の六 総務大臣は、機構処理事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、機構に対し、機構処理事務の実施に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び立入検査)
第三十八条の七 総務大臣は、機構処理事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、機構に対し、機構処理事務の実施の状況に関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、機構の事務所に立ち入らせ、機構処理事務の実施の状況に関し質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第三十五条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。
(個人番号カード関係事務に係る中期目標)
第三十八条の八 主務大臣は、個人番号カード関係事務(第十六条の二の規定により機構が処理する事務及び電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三十九条第一項に規定する認証事務をいう。以下この条から第三十八条の十二までにおいて同じ。)の実施に関し、三年以上五年以下の期間において機構が達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を定め、これを機構に指示するとともに、公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
2 中期目標においては、次に掲げる事項について具体的に定めるものとする。
一 中期目標の期間(前項の期間の範囲内で主務大臣が定める期間をいう。第三十八条の十一第一項第二号及び第三号において同じ。)
二 個人番号カード関係事務に係る業務の質の向上に関する事項
三 個人番号カード関係事務に係る業務運営の効率化に関する事項
四 その他個人番号カード関係事務に係る業務運営に関する重要事項
(個人番号カード関係事務に係る中期計画)
第三十八条の九 機構は、前条第一項の指示を受けたときは、中期目標に基づき、主務省令で定めるところにより、当該中期目標を達成するための計画(以下この条から第三十八条の十一までにおいて「中期計画」という。)を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 中期計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 個人番号カード関係事務に係る業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
二 個人番号カード関係事務に係る業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置
三 その他主務省令で定める個人番号カード関係事務に係る業務運営に関する事項
3 主務大臣は、第一項の規定により認可をした中期計画が前条第二項第二号から第四号までに掲げる事項の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、機構に対し、その中期計画を変更すべきことを命ずることができる。
4 機構は、第一項の認可を受けたときは、遅滞なく、その中期計画を公表しなければならない。
(個人番号カード関係事務に係る年度計画)
第三十八条の十 機構は、毎事業年度の開始前に、前条第一項の認可を受けた中期計画に基づき、主務省令で定めるところにより、その事業年度の個人番号カード関係事務に係る業務運営に関する計画(次条第五項において「年度計画」という。)を定め、これを主務大臣に届け出るとともに、公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
(各事業年度に係る個人番号カード関係事務に係る業務の実績に関する評価等)
第三十八条の十一 機構は、毎事業年度の終了後、当該事業年度が次の各号に掲げる事業年度のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める事項について、主務大臣の評価を受けなければならない。
一 次号及び第三号に掲げる事業年度以外の事業年度 当該事業年度における個人番号カード関係事務に係る業務の実績
二 中期目標の期間の最後の事業年度の直前の事業年度 当該事業年度における個人番号カード関係事務に係る業務の実績及び中期目標の期間の終了時に見込まれる中期目標の期間における個人番号カード関係事務に係る業務の実績
三 中期目標の期間の最後の事業年度 当該事業年度における個人番号カード関係事務に係る業務の実績及び中期目標の期間における個人番号カード関係事務に係る業務の実績
2 機構は、前項の評価を受けようとするときは、主務省令で定めるところにより、各事業年度の終了後三月以内に、同項第一号、第二号又は第三号に定める事項及び当該事項について自ら評価を行った結果を明らかにした報告書を主務大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
3 第一項の評価は、同項第一号、第二号又は第三号に定める事項について総合的な評定を付して、行わなければならない。この場合において、同項各号に規定する当該事業年度における個人番号カード関係事務に係る業務の実績に関する評価は、当該事業年度における中期計画の実施状況の調査及び分析を行い、その結果を考慮して行わなければならない。
4 主務大臣は、第一項の評価を行ったときは、遅滞なく、機構に対し、当該評価の結果を通知するとともに、公表しなければならない。
5 機構は、第一項の評価の結果を、中期計画及び年度計画並びに個人番号カード関係事務に係る業務運営の改善に適切に反映させるとともに、毎年度、評価結果の反映状況を公表しなければならない。
6 主務大臣は、第一項の評価の結果に基づき必要があると認めるときは、機構に対し、個人番号カード関係事務に係る業務運営の改善その他の必要な措置を講ずることを命ずることができる。
7 主務大臣は、機構の理事長が前項の命令に違反する行為をしたときは、機構の代表者会議(地方公共団体情報システム機構法第八条第一項に規定する代表者会議をいう。次項において同じ。)に対し、期間を指定して、当該理事長を解任すべきことを命ずることができる。
8 主務大臣は、機構の代表者会議が前項の規定による命令に従わなかったときは、同項の命令に係る理事長を解任することができる。
(個人番号カード関係事務に係る財源措置)
第三十八条の十二 国は、機構に対し、予算の範囲内において、個人番号カード関係事務に係る業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を補助することができる。
(財務大臣との協議)
第三十八条の十三 主務大臣は、次の場合には、財務大臣に協議しなければならない。
一 第三十八条の八第一項の規定により中期目標を定め、又は変更しようとするとき。
二 第三十八条の九第一項の規定による認可をしようとするとき。

第七章 法人番号
(通知等)
第三十九条 国税庁長官は、政令で定めるところにより、法人等(国の機関、地方公共団体及び会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法令の規定により設立の登記をした法人並びにこれらの法人以外の法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるもの(以下この条において「人格のない社団等」という。)であって、所得税法第二百三十条、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第百四十八条、第百四十九条若しくは第百五十条又は消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第五十七条の規定により届出書を提出することとされているものをいう。以下この項及び次項において同じ。)に対して、法人番号を指定し、これを当該法人等に通知するものとする。
2 法人等以外の法人又は人格のない社団等であって政令で定めるものは、政令で定めるところにより、その者の商号又は名称及び本店又は主たる事務所の所在地その他財務省令で定める事項を国税庁長官に届け出て法人番号の指定を受けることができる。
3 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項に変更があったとき(この項の規定による届出に係る事項に変更があった場合を含む。)は、政令で定めるところにより、当該変更があった事項を国税庁長官に届け出なければならない。
4 国税庁長官は、政令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定により法人番号の指定を受けた者(以下「法人番号保有者」という。)の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号を公表するものとする。ただし、人格のない社団等については、あらかじめ、その代表者又は管理人の同意を得なければならない。
(情報の提供の求め)
第四十条 行政機関の長、地方公共団体の機関又は独立行政法人等(以下この章において「行政機関の長等」という。)は、他の行政機関の長等に対し、特定法人情報(法人番号保有者に関する情報であって法人番号により検索することができるものをいう。第四十二条において同じ。)の提供を求めるときは、当該法人番号を当該他の行政機関の長等に通知してするものとする。
2 行政機関の長等は、国税庁長官に対し、法人番号保有者の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号について情報の提供を求めることができる。
(資料の提供)
第四十一条 国税庁長官は、第三十九条第一項の規定による法人番号の指定を行うために必要があると認めるときは、法務大臣に対し、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号(会社法その他の法令の規定により設立の登記をした法人の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所において作成される登記簿に記録されたものに限る。)その他の当該登記簿に記録された事項の提供を求めることができる。
2 前項に定めるもののほか、国税庁長官は、第三十九条第一項若しくは第二項の規定による法人番号の指定若しくは通知又は同条第四項の規定による公表を行うために必要があると認めるときは、官公署に対し、法人番号保有者の商号又は名称及び本店又は主たる事務所の所在地その他必要な資料の提供を求めることができる。
(正確性の確保)
第四十二条 行政機関の長等は、その保有する特定法人情報について、その利用の目的の達成に必要な範囲内で、過去又は現在の事実と合致するよう努めなければならない。

第八章 雑則
(指定都市の特例)
第四十三条 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市(次項において単に「指定都市」という。)に対するこの法律の規定で政令で定めるものの適用については、区及び総合区を市と、区長及び総合区長を市長とみなす。
2 前項に定めるもののほか、指定都市に対するこの法律の規定の適用については、政令で特別の定めをすることができる。
(事務の区分)
第四十四条 第七条第一項及び第二項、第八条第一項(附則第三条第四項において準用する場合を含む。)、第十七条第一項及び第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第二十一条の二第二項(情報提供者が第九条第三項の法務大臣である場合における通知に係る部分に限り、第二十六条において準用する場合を含む。)並びに附則第三条第一項から第三項までの規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
(権限又は事務の委任)
第四十五条 行政機関の長は、政令(内閣の所轄の下に置かれる機関及び会計検査院にあっては、当該機関の命令)で定めるところにより、第二章、第四章、第五章及び前章に定める権限又は事務を当該行政機関の職員に委任することができる。
(戸籍関係情報作成用情報に係る個人情報保護法の特例)
第四十五条の二 法務大臣は、第十九条第八号又は第九号の規定による提供の用に供する戸籍関係情報の作成に関する事務を行う目的の達成に必要な範囲を超えて、戸籍関係情報作成用情報(戸籍関係情報を作成するために戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている情報の電子計算機処理等を行うことにより作成される情報(戸籍関係情報を除く。)をいう。以下この条において同じ。)を保有してはならない。
2 法務大臣は、戸籍関係情報作成用情報の作成に関する事務に関する秘密について、その漏えいの防止その他の適切な管理のために、当該事務に使用する電子計算機の安全性及び信頼性を確保することその他の必要な措置を講じなければならない。
3 前項に規定する事務に従事する者又は従事していた者は、その業務に関して知り得た当該事務に関する秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
4 法務大臣は、第一項に規定する目的以外の目的のために戸籍関係情報作成用情報を自ら利用してはならない。
5 第十九条(第六号、第十三号及び第十五号から第十七号までに係る部分に限る。)の規定は、法務大臣による戸籍関係情報作成用情報の提供について準用する。この場合において、同条中「次の」とあるのは「第二十一条の二第二項の規定による通知を行う場合及び次の」と、同条第十三号中「第三十五条第一項」とあるのは「第四十五条の二第九項において準用する第三十五条第一項」と読み替えるものとする。
6 前項(次項において準用する場合を含む。)において準用する第十九条(第六号、第十三号及び第十五号から第十七号までに係る部分に限る。)の規定により戸籍関係情報作成用情報の提供を受けた者は、その提供を受けた目的の達成に必要な範囲を超えて、当該戸籍関係情報作成用情報を保有してはならない。
7 第四項及び第五項の規定は、前項に規定する者について準用する。この場合において、第四項中「第一項に規定する」とあるのは、「その提供を受けた」と読み替えるものとする。
8 戸籍関係情報作成用情報については、個人情報保護法第五章第四節の規定は、適用しない。
9 第六章の規定は、戸籍関係情報作成用情報の取扱いについて準用する。この場合において、第三十三条中「個人番号利用事務等実施者」とあるのは「法務大臣又は第四十五条の二第六項に規定する者」と、第三十六条中「第十九条第十五号」とあるのは「第四十五条の二第五項(同条第七項において準用する場合を含む。)において準用する第十九条第十五号」と読み替えるものとする。
(主務省令)
第四十六条 この法律における主務省令は、デジタル庁令・総務省令とする。
(政令への委任)
第四十七条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

第九章 罰則
第四十八条 個人番号利用事務等又は第七条第一項若しくは第二項の規定による個人番号の指定若しくは通知、第八条第二項の規定による個人番号とすべき番号の生成若しくは通知若しくは第十四条第二項の規定による機構保存本人確認情報の提供に関する事務に従事する者又は従事していた者が、正当な理由がないのに、その業務に関して取り扱った個人の秘密に属する事項が記録された特定個人情報ファイル(その全部又は一部を複製し、又は加工した特定個人情報ファイルを含む。)を提供したときは、四年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第四十九条 前条に規定する者が、その業務に関して知り得た個人番号を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、三年以下の懲役若しくは百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第五十条 第二十五条(第二十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、三年以下の懲役若しくは百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第五十一条 人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の個人番号を保有する者の管理を害する行為により、個人番号を取得した者は、三年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の規定は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用を妨げない。
第五十二条 国の機関、地方公共団体の機関若しくは機構の職員又は独立行政法人等若しくは地方独立行政法人の役員若しくは職員が、その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する特定個人情報が記録された文書、図画又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。)を収集したときは、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第五十二条の二 第三十八条の三の二の規定に違反して秘密を漏らした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第五十二条の三 第四十五条の二第三項の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、二年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第五十三条 第三十四条第二項又は第三項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第五十三条の二 第二十一条の二第八項又は第四十五条の二第九項において準用する第三十四条第二項又は第三項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第五十四条 第三十五条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第五十五条 偽りその他不正の手段により個人番号カードの交付を受けた者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第五十五条の二 第二十一条の二第八項又は第四十五条の二第九項において準用する第三十五条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第五十五条の三 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした機構の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三十八条の四の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったとき。
二 第三十八条の七第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
第五十六条 第四十八条から第五十二条の三までの規定は、日本国外においてこれらの条の罪を犯した者にも適用する。
第五十七条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して次の各号に掲げる違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第四十八条、第四十九条及び第五十三条 一億円以下の罰金刑
二 第五十一条及び第五十三条の二から第五十五条の二まで 各本条の罰金刑
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

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