1.クレーム対応とコンプライアンスの関係
苦情・クレームへの対応は,その組織(企業・役所等)の社会における評価と直結するので,顧客(消費者や取引先・住民等)であるステークホルダーからの信頼を得るためには,全社員・従業員・職員(常勤・非常勤にかかかわらず)が対応方法をわきまえておくべき組織マネジメントの重要事項である。
よって、クレーム対応はコンプライアンスの問題であり、しかも顧客との継続的な関係の中で発生する場合は特にマネジメントに不可欠な内容となっている。コンプライアンスの一環と位置づけることによって,職員の対応に一貫性が出てきて、軸足のしっかりした対応が可能となろう。
2.クレーム対応は、初期対応が決定的重要
(1)コンプライアンス違反の可能性から初期対応へ
苦情やクレームが発生すれば、大多数の場合は、そこで何らかのコンプライアンス違反があったと考えるべきであろう。
コンプライアンスが、ステークホルダーの信頼を得ることであるならば、クレーム発生した時点で、何か信頼を裏切ることがあったのではないかと考えて、コンプライアンス違反の疑いある前提で初期対応をする。
もっとも、常習犯的クレーマーも世の中には一定数はいるであろう。しかしそれは初期の段階ではハッキリとわからないから、初期対応として、「謝罪と事実確認」へ入っていくべきなのである。
この迅速で正確な初期対応を行なえば、問題が大きくなったりトラブルに発展したりする事もないのである。
初期対応では、苦情・クレーマーを言ってきた方に対して、「クレームを受けたことの認識を伝えるとともに迅速に対応することもしっかりと伝える」クレーム初期対応の基本を守るべきであろう。
(2)初期対応のミスは大きなクレームに発展する
苦情やクレームが発生したときに、それをその場限りでなおざりにしてやり過ごそうとすると、そのような初期対応のミスは大きなクレームに発展することが多くなる時代認識が必要である。
例えば、受付をたらい回しにする、上司へ適切に報告・連絡・相談しない、些細な内容と考えてキチンとしたクレーム対応をすべきと考えないことが多い組織は、どんどん顧客の心は離れていくであろう。
購入商品であれば、製造会社だけでなく、卸会社または流通会社、小売店等のどの段階でもクレームは発生する。
例えば、ソニーのカメラをアマゾンで上新電機から購入すれば、三者ともにクレームの受付をすべきであろう。
実際、私も部品の不具合で三者とも電話したことがあるが、ソニーは特に対応が優れていた。ソニーには何の貸し借りもないので、率直な感想であるが、現場の一次対応、そこで解決せずに引き継いだ上司、このいずれもがここで私がこうしたらいいというのが実践できていて、かなり感心する対応であった。
このようなそれぞれの企業に関係するクレーム対応の初期対応の重要性は,コンプライアンス経営の下では,研修などを通じて,非常勤・パート・アルバイトなども含めた全従業員が知っておくべき時代になっている。
(3)クレーム対応の部署に頼りすぎる失敗
仮に、クレームに対応する部署があっても、クレームを発している者には、会社内部の事情など関係はない。
よって、クレームを受けた者は、組織として受け止めることが大事で自分の担当ではないといった態度を決して取ってはならない。
初期対応では、クレームのたらい回しと思われないようにして、「謝罪と事実確認」こそが最重要であることを認識して、クレームを言ってきた方の不快な気分をなだめて、強い怒りがあるときは相手の感情を静めることが最善の策であろう。
その際に、聞き役に回ることが一番大事で、初期対応の段階から自らの正当性を主張することはしない。
(4)謝罪は相手の目の前で頭を下げるのが基本
本来、倫理的には、相手に謝罪すべき時は,会って頭を下げるのが基本である。
たとえ、メールによるクレーム、ファックスによるクレーム、そして電話によるクレーム等遠方の場所からのクレームであっても、IT技術が進歩した時代だからこそ、直接会って、謝罪する態度が誠心誠意対応している印象を強く与える。
特に、人間は年を重ねるごとに、役職が上がるごとに、頭を下げることができなくなる現実を知ろう。
3.クレーム対応規程・マニュアル等の整備と職員教育
(1)クレーム「方針」「規程」「報告経路」及び「マニュアル」は必須
まず,組織のコンプライアンスの観点から、組織内で全職員に対してクレーム対応方針を明示する。
その方針に基づく規程を作成し、さらに緊急時の報告経路とマニュアルを整備し、定期的に見直すことが必須の基本事項である。
(2)難クレームなどへの対策チーム
重大化したクレーム、悪質クレーム、反社会的勢力によるクレームなどへの対策チームを想定しておく。
(3)クレーム対応研修
クレーム対応方針等の周知のため、説明会や研修を行う。
クレームをたらい回しにしないように、誰が受けても対応できるように職員・従業員を教育することが大切である。
(4)クレーム事例集の作成と見直し
会社や役所ではその組織特有のクレームが多いので、従業員のミス、モンスタークレーマーからの言いがかりであるとか,クレームの事例ごとに,ケ-ス別の対応をまとめて、組織で共有する事例集を作成する。
仮に想定していない事態が発生した場合も、初期対応の基本を守り、軽率な取扱いをせず、大きな問題をはらんだケースでは対策会議を招集し、対策を検討することが重要である。
そして、事例の追加や対応の修正等の見直しを年に数回はするようにする。