建設業許可申請(新規/更新)、建設業変更届、経営規模等評価申請、入札資格申請
【建設業の営業ノウハウ】
1.建設業許可制
建設工事の請負を営業とするには、原則として許可を受けなければならない。
発注者から直接建設工事を請け負う元請負人はもちろんのこと、下請負人の場合でも、請負として建設工事を施工する者は、個人・法人の区別なく許可を受ける必要がある。
下請負人からさらに請負をする孫請と呼ぶ2次下請、更に2次下請から次の下請に発注する3次下請の曾孫請以下の場合も同様である。
従業員がおらず事業主ひとりだけで作業を行う建設業者もあり、この場合は一人親方と呼ばれることがある。
軽微な工事の範囲を超えれば事業主一人の場合でも建設業許可が必要である。
2.下請け
建設業法では発注者から請け負った工事全てを下請業者に一括発注する、いわゆる丸投げは禁止されており、民間工事においては例外規定があるものの、請け負った工事を元請人の監督員等を常駐させずにそのまま下請けに出すことは法律違反である。
少なくとも業を生業として営む請負人が発注者から技術力や工事経歴等を信頼されて発注を受けたのであれば、監理技術者や主任技術者を配置し技術的な管理責任を果たした上で、一部の工事を下請けに出すのが本来の姿である。
また、下請業者に建設工事を発注する際にも、上記金額を超える請負契約を締結する場合、下請業者が建設業許可を有しているか否かの確認は発注する者にも責任は生ずるので注意が必要である。
3.談合
談合行為、重大災害などを発生させた場合など、監督官庁による期間を定めての営業の停止・建設業許可を取り消す処分が課せられる場合がある。また、公共工事においては登録先の発注者による指名停止という形での処分もある。
4.許可不要の場合
軽微な建設工事のみを請け負って営業する者は、必ずしも許可を受けなくてもよい。
軽微な工事とは、建築一式工事の場合には、その1件の工事請負代金の額が1,500万円未満(消費税含む)の工事、または延面積が150m2未満の木造住宅工事、建築一式工事以外の建設工事の場合には、その1件の工事の請負代金の額が500万円未満(消費税含む)の建設工事をいい、このような小規模工事のみを請負うには、必ずしも建設業許可を受ける必要はない。下図は、国土交通省 九州地方整備局「建設業法」より一部引用
5.許可の効用
許可を取ることで、毎年の決算の届出等が義務付けられるが、反面、法違反(無許可営業)とならないこと、また社会的信用が増すことや、経営事項審査を受け公共工事に参加できるというメリットの方が大きい。
建設業許可は5年更新制であり、有効期間が満了する前に更新の許可申請をする必要がある。
直前の決算等において許可要件を満たしていないと、許可は下りない。
【建設業の許可区分】
1.「国土交通大臣許可」か「知事許可」か
「大臣許可」とは、2つ以上の都道府県の区域内に営業所(営業所とは、常時見積もり、契約締結、金銭の受領、支払等建設工事の請負契約に関する重要な業務を行う事務所)を設けるときにとらなくてはならない許可のこと。例えば、大阪に本店(主たる営業所)を置いて東京や福岡に支店(従たる営業所)を設けるような場合に必要となる。
それに対して、「知事許可」とは、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けるときにとる許可である。なお、「知事許可」であっても、営業所が同一都道府県に限るというだけで、営業エリアや施工エリアに制限はない。例えば大阪に営業所を置く大阪府知事の許可を受けている業者が、和歌山県での仕事を受注することも出来る。他府県に従たる営業所を置く場合は、現在有効な知事許可から、大臣許可への許可換え新規申請となる。
2.「特定」か「一般」か
「特定」とは、建設工事の最初の注文者(以下、「発注者」という)から元請負人として直接請け負った建設工事について、一件あたりの合計額が4,500万円以上(税込み。但し、建築一式工事業に関しては7,000万円以上)となる下請契約を下請負人と締結して施工させるときに、とらなくてはならない許可のこと。
金額区分は請負金額ではなく請け負って、さらに外注に回す金額であることに注意。外注先の下請業者の保護を目的とする。一方、「一般」建設業者は、外注総額を超えるような高額工事を元請として受注することはできない。高額工事を元請として受注する場合は、外注金額を枠内に抑え、直営(自家)施工することになる。これらは元請契約として受注する場合に限る制限である。
元請工事としてではなく、下請工事として請負う場合に関しては、「一般」建設業であっても外注総額などの制約を受けることなく受注することができる。
「特定建設業」の申請を行うには、指定建設業の業種かそうでないかによって要件は違うが一般建設業に求められる資格要件よりは厳しいものとなっている。下請けへの支払い能力、営業所ごとに専任配置する技術者が要件を満たしていないと特定建設業許可は取れない。
繰り返しになるが、元請が発注者から請け負う額に制限はない。特定建設業か一般建設業かの判断は、元請として下請に発注する額によって決まる。※下請契約の額には、注文者が材料を提供する場合は、その材料費等を含まない。
3.許可種類と表記方法
従って、許可区分は、大臣特定、知事特定、大臣一般、知事一般の4種類となる。ひとつの業者が、「大臣」と「知事」もしくは複数の「知事」許可を同時に、あるいはある業種の許可を「一般」と「特定」を同時に取得することはない。ただし、業種が違えば、ある業種は特定、ある業種は一般で許可を取る場合はある。
許可年度を加えて、「特定建設業 建築工事業 国土交通大臣許可(特定-19)第○○○○号」などと表記される。これを明示した許可票を営業所および工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。この許可票を通称「金看板」と呼ぶ。許可年度が5年以上前の広告や許可票を散見するが、この場合、更新したのか確認することも重要である。
【建設業許可の要件】
1.一般建設業
一般の許可を受けるには次の要件を満たさなければならない(第7条)。
(1)経営業務の管理責任者がいること
5年以上の経営業務の管理責任(許可建設業)、7年以上の経営業務の管理責任(許可以外建設業)、7年以上 の経営業務の管理責任に準じる地位で経営業務の補佐した経験
(2)営業所ごとに専任の技術者がいること(専任技術者)
建設工事に関わる学校卒業と実務経験,有資格者、特定建設業…さらに要件加重
(3)建設工事の請負契約に関して誠実性のあること
(4)財産的基礎、金銭的信用のあること
500万,5年間経営、特定建設業…欠損20%,流動比率75%,資本金2000万+自己資本4000万
(5)許可を受けようとする者が一定の欠格要件に該当しないこと
行為無能力者・不正行為者・犯罪者
このうち、管理責任者、専任技術者に関しては「名義借り」でなく、常勤の社員・役員や事業主であることが必須であり、これらの資格者なしに許可を取ることはできない。許可取得・更新時だけでなく継続して必要であり、退職したり資格を失った場合は有資格者を補充するか、さもなくば建設業許可を廃業するしかない。
2.特定建設業
特定の許可は一般建設業の要件を満たすと共に、さらに専任技術者、財産的基礎に厳しい条件を定めている。
【建設業許可の手続】
1.許可申請の準備
…(1)許可申請書類の入手,(2)許可申請書類の種類,(3)許可手数料の納入(納入区分・納入方法)-登録免許税と登録手数料
2.許可申請の手続
①申請書類の提出
A:大臣許可を申請する場合…都道府県知事経由で地方整備局長に
B:知事許可を申請する場合…都道府県知事
②書面審査及び営業所の実態調査
3.許可申請の結果
①許可されたとき…許可通知書が申請者に送付
②許可申請の却下と取下げ…登録免許税は還付,許可手数料は非還付
4. 許可を受けた後の届出等
①変更等の届出…商号又は名称を変更~毎営業年度(決算期)を経過したとき~定款に変更があったとき
②廃業等の届出…事業主の死亡・合併消滅・解散・建設業の廃止
③許可の更新…許可日から5年
④更新などにおける提出書類の省略…一部
⑤許可換え…営業所の新設,廃止,所在地の変更などで許可行政庁を異にするとき
⑥ 標識の掲示…店舗・建設現場ごと
『建設工事の業種一覧』と建設工事の例示
…建設業法上の許可には28種類の業種があったが、平成28年6月1日より、新たな業種として解体工事業が新設され、28業種から29業種となった。
(指定)7業種は特定建設業の許可を受けようとするときは、専任技術者は実務経験では認められず、一定の国家資格(1級施工管理技士などの資格)を所持、または大臣特別認定者である必要となる。
略号 | 建設工事の種類 | 建設業の種類 | 建設工事の内容 | 建設工事の例示 |
(土) | 土木一式工事 | 土木工事業(指定) | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む) | |
(建) | 建築一式工事 | 建築工事業(指定) | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 | |
(大) | 大工工事 | 大工工事業 | 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 | 大工工事、型枠工事、造作工事 |
(左) | 左官工事 | 左官工事業 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 | 左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事 |
(と) | とび・土工・コンクリート工事 | とび・土工工事業 | イ 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て、工作物の解体等を行う工事 ロ くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事 ハ 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事 ニ コンクリートによる工作物を築造する工事 ホ その他基礎的ないしは準備的工事 | イ とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物の揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事、工作物解体工事 ロ くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事 ハ 土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事 ニ コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事 ホ 地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、道路付属物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事 |
(石) | 石工事 | 石工事業 | 石材(石材の類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 | 石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事 |
(屋) | 屋根工事 | 屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 | 屋根ふき工事 |
(電) | 電気工事 | 電気工事業(指定) | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 | 発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事 |
(管) | 管工事 | 管工事業(指定) | 冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 | 冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更正工事 |
(タ) | タイル・れんが・ブロツク工事 | タイル・れんが・ブロツク工事業 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 | コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、石綿スレート張り工事 |
(鋼) | 鋼構造物工事 | 鋼構造物工事業(指定) | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 | 鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油・ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事 |
(筋) | 鉄筋工事 | 鉄筋工事業 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 | 鉄筋加工組立て工事、ガス圧接工事 |
(ほ) | ほ装工事 | ほ装工事業(指定) | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等によりほ装する工事 | アスファルト舗装工事、コンクリートほ装工事、ブロックほ装工事、路盤築造工事 |
(しゅ) | しゆんせつ工事 | しゆんせつ工事業 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 | 浚渫(しゅんせつ…水底の土砂をさらう)工事 |
(板) | 板金工事 | 板金工事業 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 | 板金加工取付け工事、建築板金工事 |
(ガ) | ガラス工事 | ガラス工事業 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 | ガラス加工取付け工事 |
(塗) | 塗装工事 | 塗装工事業 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 | 塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上げ工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事 |
(防) | 防水工事 | 防水工事業 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 | アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
(内) | 内装仕上工事 | 内装仕上工事業 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 | インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事 |
(機) | 機械器具設置工事 | 機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 | プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設設置工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
(絶) | 熱絶縁工事 | 熱絶縁工事業 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 | 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事 |
(通) | 電気通信工事 | 電気通信工事業 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事 | 電気通信線路設備工事、電気通信機械設備工事、放送機械設備工事、空中線設備工事、データ通信設備工事、情報制御設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
(園) | 造園工事 | 造園工事業(指定) | 整地、植木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物等の屋上等を緑化し、又は植生をする工事 | 植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事 |
(井) | さく井工事 | さく井工事業 | さく井(せい)機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 | さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事 |
(具) | 建具工事 | 建具工事業 | 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 | 金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事 |
(水) | 水道施設工事 | 水道施設工事業 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 | 取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事 |
(消) | 消防施設工事 | 消防施設工事業 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 | 屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事 |
(清) | 清掃施設工事 | 清掃施設工事業 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 | ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
「解」 工作物の解体を行う工事 工作物解体工事
なお、この新しい解体専門工事は、 それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当する。総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ『土木一式工事』や『建築一式工事』に該当する。