LGBT(Q+)が令和2・3年改正個人情報保護法・同施行令で「要配慮個人情報」にされなかった理由は何だろうか。

LGBT(Q+)と令和2・3年の改正個人情報保護法の運用

平成27年改正個人情報保護法では、従来の機微(センシティブ)情報を「要配慮個人情報」とすると思っていたものが、審議検討の結果、最終的な「個人情報保護法施行令」第2条にはいくつかが入らなかった。

その一つが本籍地等の他に「性生活」である。

今日的には、性的マイノリティであるLGBT(女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、性同一性障害を含む性別越境者など(トランスジェンダー、Transgender))はセンシティブ情報としてこれに含むと解釈されてきたが、現在の法令ではLGBは直接的には入らない

但し、LGBTのTである性同一性障害は通常は医師の診断結果があるので、それがあれば「要配慮個人情報」である。

また、近年では、LGBTQもよく使われるようになっており、これはLGBTにQが加わったもので、Q はクィア (Queer) を意味している場合と、クエスチョニング (Questioning) を意味している場合がある。さらに、LGBTQ+は、LGBTQに+を加え、LGBTQで言い表せない人も含め、性の多様性の取りこぼしがないことを目指した呼称で普及してきた。

なお、民間企業がよく加入するプライバシーマークでは、これまでと同じ機微情報で、改正されたGDPR(EU一般データ保護規則)では、第9条に相当する規定がある。

また、金融関係の「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」第5条では機微(センシティブ)情報に性生活が入っている。

しかしながらプライバシーの保護観点からは、要配慮個人情報そのものではないが準じた扱いが必要であろう。

なお、要配慮個人情報の取得時に必要な要件として、利用目的の明示だけでは足らず本人の事前の同意が不可欠になっているので、取得管理するのは限られよう。

また仮に取得しても、第三者提供はオプトインでオプトアウトは認められない。

もっとも、このような理解の下で、一般の方はセンシティブ情報であっても要配慮個人情報でないものが明瞭に判断できるであろうか。

積極的な、LGBTが改正個人情報保護法・同施行令で「要配慮個人情報」にされなかった理由は、時期尚早であるなど以外にあるであろうか。

■個人情報保護委員会に問い合わせたところ、すぐに答えられず、I氏から、委員会の議事録を調べて返答が後程あった。それによると、LGBTについては、それに対する社会的な合意・対応が明確ではなく、検討を先送りにしたとのことであった。

また、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(案)」に関する意見募集結果において、「一般的に、(3)LGBT であることが分かる証明書等、(4)LGBT であることを公的に認められた事実、(5)公的には認められていないLGBT である事実は、要配慮個人情報に該当しません。ただし、法令に定める病歴、障害、診療情報が含まれる場合には、要配慮個人情報に該当する可能性があります。」との個人情報保護委員会及び厚生労働省の考え方が示されている。平成29年3月

(なお、本籍地については、変更の可能性があるので、要配慮個人情報とはしなかったらしいが差別の元になっていることが多くこれでいいのか)

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■個人情報保護法(令和5年4月1日現在)

第2条2項3号

  この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

■個人情報の保護に関する法律施行令(令和5年4月1日現在)

(要配慮個人情報)
第二条 法第二条第三項の政令で定める記述等は、次に掲げる事項のいずれかを内容とする記述等(本人の病歴又は犯罪の経歴に該当するものを除く。)とする。
一 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。
二 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という。)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という。)の結果
三 健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと。
四 本人を被疑者又は被告人として、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと。
五 本人を少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第三条第一項に規定する少年又はその疑いのある者として、調査、観護の措置、審判、保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと。

■個人情報の保護に関する法律施行規則(令和5年4月1日現在)

(要配慮個人情報)
第五条 令第二条第一号の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害は、次に掲げる障害とする。
一 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)別表に掲げる身体上の障害
二 知的障害者福祉法(昭和三十五年法律第三十七号)にいう知的障害
三 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)にいう精神障害(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第一項に規定する発達障害を含み、前号に掲げるものを除く。)
四 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第四条第一項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度であるもの

■個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(令和5年4月1日現在)

「要配慮個人情報」とは、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして次の(1)から(11)までの記述等が含まれる個人情報をいう。
要配慮個人情報の取得や第三者提供には、原則として本人の同意が必要であり、法第27条第2項の規定による第三者提供(オプトアウトによる第三者提供)は認められていないので、注意が必要である(3-3-2(要配慮個人情報の取得)、3-6-1(第三者提供の制限の原則)、3-6-2(オプトアウトによる第三者提供)参照)。また、要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある事態が生じた場合には、個人情報保護委員会に報告しなければならない(3-5-3(個人情報保護委員会への報告)参照)。
なお、次に掲げる情報を推知させる情報にすぎないもの(例:宗教に関する書籍の購買や貸出しに係る情報等)は、要配慮個人情報には含まない。
(1)人種
人種、世系又は民族的若しくは種族的出身を広く意味する。なお、単純な国籍や「外国人」という情報は法的地位であり、それだけでは人種には含まない。また、肌の色は、人種を推知させる情報にすぎないため、人種には含まない。
(2)信条
個人の基本的なものの見方、考え方を意味し、思想と信仰の双方を含むものである。
(3)社会的身分
ある個人にその境遇として固着していて、一生の間、自らの力によって容易にそれから脱し得ないような地位を意味し、単なる職業的地位や学歴は含まない。
(4)病歴
病気に罹患した経歴を意味するもので、特定の病歴を示した部分(例:特定の個人ががんに罹患している、統合失調症を患っている等)が該当する。
(5)犯罪の経歴
前科、すなわち有罪の判決を受けこれが確定した事実が該当する。
(6)犯罪により害を被った事実
身体的被害、精神的被害及び金銭的被害の別を問わず、犯罪の被害を受けた事実を意味する。具体的には、刑罰法令に規定される構成要件に該当し得る行為のうち、刑事事件に関する手続に着手されたものが該当する。
(7)身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること(政令第2条第1号関係)
次の①から④までに掲げる情報をいう。この他、当該障害があること又は過去にあったことを特定させる情報(例:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に基づく障害福祉サービスを受けていること又は過去に受けていたこと)も該当する。
①「身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)別表に掲げる身体上の障害」があることを特定させる情報
・医師又は身体障害者更生相談所により、別表に掲げる身体上の障害があることを診断又は判定されたこと(別表上の障害の名称や程度に関する情報を含む。)
・都道府県知事、指定都市の長又は中核市の長から身体障害者手帳の交付を受け、これを所持していること又は過去に所持していたこと(別表上の障害の名称や程度に関する情報を含む。)
・本人の外見上明らかに別表に掲げる身体上の障害があること
②「知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)にいう知的障害」があることを特定させる情報
・医師、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、障害者職業センターにより、知的障害があると診断又は判定されたこと(障害の程度に関する情報を含む。)
・都道府県知事又は指定都市の長から療育手帳の交付を受け、これを所持していること又は過去に所持していたこと(障害の程度に関する情報を含む。)
③「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)にいう精神障害(発達障害者支援法(平成16年法律第167号)第2条第1項に規定する発達障害を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害を除く。)」があることを特定させる情報
・医師又は精神保健福祉センターにより精神障害や発達障害があると診断又は判定されたこと(障害の程度に関する情報を含む。)
・都道府県知事又は指定都市の長から精神障害者保健福祉手帳の交付を受け、これを所持していること又は過去に所持していたこと(障害の程度に関する情報を含む。)
④「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第4条第1項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度であるもの」があることを特定させる情報
・医師により、厚生労働大臣が定める特殊の疾病による障害により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けていると診断されたこと(疾病の名称や程度に関する情報を含む。)
(8)本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という。)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という。)の結果(政令第2条第2号関係)(※)
疾病の予防や早期発見を目的として行われた健康診査、健康診断、特定健康診査、健康測定、ストレスチェック、遺伝子検査(診療の過程で行われたものを除く。)等、受診者本人の健康状態が判明する検査の結果が該当する。
具体的な事例としては、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づいて行われた健康診断の結果、同法に基づいて行われたストレスチェックの結果、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づいて行われた特定健康診査の結果などが該当する。また、法律に定められた健康診査の結果等に限定されるものではなく、人間ドックなど保険者や事業主が任意で実施又は助成する検査の結果も該当する。さらに、医療機関を介さないで行われた遺伝子検査により得られた本人の遺伝型とその遺伝型の疾患へのかかりやすさに該当する結果等も含まれる。なお、健康診断等を受診したという事実は該当しない。
なお、身長、体重、血圧、脈拍、体温等の個人の健康に関する情報を、健康診断、診療等の事業及びそれに関する業務とは関係ない方法により知り得た場合は該当しない。
(9)健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと(政令第2条第3号関係)(※)
「健康診断等の結果に基づき、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導が行われたこと」とは、健康診断等の結果、特に健康の保持に努める必要がある者に対し、医師又は保健師が行う保健指導等の内容が該当する。
指導が行われたことの具体的な事例としては、労働安全衛生法に基づき医師又は保健師により行われた保健指導の内容、同法に基づき医師により行われた面接指導の内容、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき医師、保健師、管理栄養士により行われた特定保健指導の内容等が該当する。また、法律に定められた保健指導の内容に限定されるものではなく、保険者や事業主が任意で実施又は助成により受診した保健指導の内容も該当する。なお、保健指導等を受けたという事実も該当する。
「健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により診療が行われたこと」とは、病院、診療所、その他の医療を提供する施設において診療の過程で、患者の身体の状況、病状、治療状況等について、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者が知り得た情報全てを指し、例えば診療記録等がこれに該当する。また、病院等を受診したという事実も該当する。
「健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により調剤が行われたこと」とは、病院、診療所、薬局、その他の医療を提供する施設において調剤の過程で患者の身体の状況、病状、治療状況等について、薬剤師(医師又は歯科医師が自己の処方箋により自ら調剤する場合を含む。)が知り得た情報全てを指し、調剤録、薬剤服用歴、お薬手帳に記載された情報等が該当する。また、薬局等で調剤を受けたという事実も該当する。
なお、身長、体重、血圧、脈拍、体温等の個人の健康に関する情報を、健康診断、診療等の事業及びそれに関する業務とは関係のない方法により知り得た場合は該当しない。
(10)本人を被疑者又は被告人として、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと(犯罪の経歴を除く。)(政令第2条第4号関係)
本人を被疑者又は被告人として刑事事件に関する手続が行われたという事実が該当する。他人を被疑者とする犯罪捜査のために取調べを受けた事実や、証人として尋問を受けた事実に関する情報は、本人を被疑者又は被告人としていないことから、これには該当しない。
(11)本人を少年法(昭和23年法律第168号)第3条第1項に規定する少年又はその疑いのある者として、調査、観護の措置、審判、保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと(政令第2条第5号関係)
本人を非行少年又はその疑いのある者として、保護処分等の少年の保護事件に関する手続が行われたという事実が該当する。
(※)遺伝子検査により判明する情報の中には、差別、偏見につながり得るもの(例:将来発症し得る可能性のある病気、治療薬の選択に関する情報等)が含まれ得るが、当該情報は、「本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査の結果」(政令第2条第2号関係)又は「健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと」(政令第2条第3号関係)に該当し得る。

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