はじめに:福祉サービスのリスクマネジメント研修の重点
福祉部門は、企業的な取り組みがなされたのが比較的新しく介護サービス等業者においてはリスクマネジメントやコンプライアンスが十分になされずに来ていることが多い。
ここでは、福祉サービスにおけるリスクマネジメント(厚生労働省H14)等を参考にしながら、「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について:平成14年3月28日厚生労働省公表より一部引用して以下に進めよう。
福祉への企業参入の現状認識
介護保険制度の導入や社会福祉基礎構造改革の進展により、福祉サービスの利用は措置から契約に基づく制度へと移行しつつある。
契約に基づくサービスの利用制度のもとでは、互いの権利・義務関係が明確となり、サービスを適切に提供することが求められる。
福祉サービスにおいては利用者の安心や安全を確保することが基本であり、事故防止対策を中心とした福祉サービスにおける危機管理体制の確立が急務となっている。
一方、福祉サービスは利用者の日常生活全般に対する支援や発育の助長を促すことを目的に提供するものであり、危機管理体制のあり方についてこうした福祉サービスの特性を踏まえた視点と対応が必要である。
1 福祉サービスのリスクマネジメント総論
○福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)の基本的な視点
「より質の高いサービスを提供することによって多くの事故が未然に回避できる」という考え方(クオリティーインプルーブメント)で取り組むべき、個別性が高いため、それぞれの施設において十分な検討と創意工夫が必要
○経営者の役割や責任 経営者のリーダーシップと決意の重要性
2 危機管理(リスクマネジメント)を進める体制整備にあたって
○危機管理体制の整備や取り組みを進めるにあたってのポイント
組織風土の改善、組織全体での取り組み、継続的な取り組み
3 事故を未然に防ぐ諸方策に関する指針
○福祉サービスの特性を踏まえた視点と具体的な対応
コミュニケーションの重要性、苦情解決への取り組み、リスクマネジメントの視点を入れた業務の見直しと取り組みの重要性
4 事故が起こってしまったときの対応指針
○利用者本人やご家族の気持ちを考え、相手の立場に立った発想が基本
サービスの質の向上を基本的な視点とした日頃からの取り組みの重要性
・組織としての対応、事実を踏まえた対応、窓口を一本化した対応が原則
・事実の把握と家族等への十分な説明、改善策の検討と実践、誠意ある対応
・事故発生直後の迅速な対応に向けた備えと周知徹底の必要性
5.社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン(東京都福祉保健局)
(1)「リスクマネジメント研修」について
<社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン>東京都福祉保健局 平成21年3月より一部引用
リスクマネジメント研修は、組織全体として、事故の防止や安全の確保、ケアの質向上に必要となる知識、技術、考え方などについて、職員として習得するべき内容を整理し、 基本知識を学ぶ段階から、意識を変革し、自律的に研鑽に取り組む段階を目指す。
組織全体としての研修体系に加えて、部署ごとに重点的に取り組む課題を見出し、自発的な勉強会が開催されることが理想である。
(2)リスクマネジメント研修の効果を上げる
一般論を学ぶだけではなく、演習やグループワークなどにより施設内の事例に基づく検討を通して改善につなげるための手順を習得し、介護事故の予防やケアの質改善に向けた意識を確実に根付かせることを目指す。
・ 基本事項を習得する全体研修のほかに、事故やヒヤリハットの発生状況に基づいて重点的に取り組むテーマを設定することも効果的である。
また、個別具体的なテーマについて(例えばシーティング、クッションのあて方、移乗のしかた、嚥下の仕組みを踏まえた食事介助の仕方など)正しい知識を直接学ぶ機会を設けることも有効である。