1.企業不祥事発生時の役員への責任追及の増加

(1)東芝不正会計事件の例

企業不祥事が発生した時に、2015年7月に発覚した「東芝不正会計事件」では、経営陣の法的責任の追及が行われている。

このような傾向は、近時増加傾向で、2016年4月に発覚した「三菱自動車燃費データ改ざん事件」でも、経営陣の法的責任追及が取りざたされている。

(2)法的に適正な動きなのか

確かに、判例上は(企業)役員には善管注意義務や忠実義務があり、その内容としてコンプライアンス態勢の構築やその内容としてのリスク管理義務があるといっていいであろう(会社法第330条,民法第644条、第423条、大和銀行事件大阪地判平成12・9・2等参照)。

権利意識の高い株主、とりわけ外国人株主は、法的な請求を今後ともしてくるであろう。

2.強い株主代表訴訟の動き

東芝やオリンパス不正会計事件でも会社による旧経営陣への責任追及があり、会社がしないときは株主代表訴訟によって責任追及するダスキン違法添加物事件や光ケーブルを巡る価格カルテルの住友電気工事事件がある。

また、上場企業であれば不祥事があれば株価が急落することが多く、その場合に西武鉄道有価証券報告書虚偽記載事件や粉飾決算に関するライブドア事件では証券訴訟として下落分を損害賠償請求する。

東芝事件でもその動きが外国人株主を中心にある。

3.行政部門でも地方公共団体で同様の動き

(1)首長や職員の責任追求

役員責任追及は、行政分野でも同じようことが問題にあっており、住民訴訟に何らかの制限をかけないと首長等の責任が重くなりすぎて厳しすぎることになっている。

平成29年の内部統制法案では、インターナルコントロールと併せてこの点に条例で制限が可能になる地方自治法の改正がなされた。

※詳しくはこのサイトの別稿参照

(2)リスクマネジメントの「対応」に相当

この場合に、官でも民でも「保険による訴訟リスク軽減」、所謂「対応」が検討されてることが多い。

私もその保険加入相談は何度も受けた。

しかし、免責条項などをよく読まないとムダ金に終わること多いであろう。

むしろ私のコンサルティングでは、そのような責任追及を日ごろのリスク管理を含めた業務運営やリーダーシップによって回避できるので、実際の国家公務員に関する訴訟の例を提示することにしている。

このほうが本道でなかろうか。