1.建設業法

 建設業がまず第一にコンプライアンス・リスク管理をすべき法令は、「建設業法」であることは、いつの時代でも変わらないであろう。

 しかしながら、認知バイアスが働いて、改正独占禁止法や改正労働基準法などを筆頭にあげる者がいる。それぞれの時代の現実で目の前にあるからであるからだがそれはないだろう。

建設業法は、8章、55条あるが、圧倒的に重要なのは、第2章の建設業の許可と第3章の請負契約に関する部分であろう。社会のインフラの基礎作りのお仕事であるがゆえに、29種類の細かく分かれた業務に対応したふさわしい能力の実証のための資格である許可を取る必要がある。

そして、小売業のような金額の小さな取引ではなくて、何百万円、何億円、何十億円といった、高額の取引をするので請負契約もしっかりと結ぶ必要があるし、家一つでもビル一つでも多くの建設業者が入ってくることは必定であるから、契約関係は全て様式契約として紙またはデジタルで結ぶ必要がある。

◆なお、下請法は、取引内容によっては建設業者にも適用があるが、上記のように元々建設業は、元請と下請をいわば当然の前提としているがゆえに、建設業法にその規定がある。

2.独占禁止法

「談合」である、目玉は。談合にもいろいろな諸相があるが、高いのは悪い、安いのも悪い、市場価格も悪いとなれば、謂った何が問題なのか問うと「自由競争」に反するからである。それは、一つの思想であるかもしれないし、一つの価値判断でもあるかもしれないが、それが正しいとして日本社会は自由主義経済で成り立っているのであるから、その錦の御旗は下げられないであろう。

3.労働法関係

最も、令和の時代にホットな法令である。なぜなら、令和6年4月1日から「建設業の働き方改革」として、例えば、残業規制として、36条の協定においても、基本は、月45時間が上限である。年間は360時間。災害時でも、年720時間が上限である。ただし、この協定外の労基法33条規制は別である。

しかし、こればっかり気に取られていてはいけない。次のように、労働に関する多くの法があることを忘れるな。

(1)労使関係
  ・労働基準法
  ・労働組合法
  ・労働関係調整法
(2)労働衛生関係
  ・労働安全衛生法
  ・じん肺法
(3)社会保険関係
 ・労働者災害補償保険法
 ・雇用保険法
 ・健康保険法
 ・厚生年金保険法
 ・国民年金法
 ・中小企業退職金共済法
(建設業退職金共済制度)
(4)雇用関係
 ・職業安定法
 ・障害者の雇用の促進等に関する法律
 ・労働者派遣法
 ・男女雇用機会均等法
 ・建設労働者の雇用の改善等に関する法律、・労働施策総合推進法、・最低賃金法その他

4.環境関係法

 建設業は、建築工事もそうであるが、土木工事では一定の産業廃棄物が不可避的に出てしまう。そこで、地球環境の保全の観点が、サステナビリティから不可欠になっている現代では、この分野の法もまた重要なコンプライアンス・リスク管理の対象である。廃棄物処理法等がある。

◆その他にも、上記4つ(分野)以外に重要な法令が多数ある。次回以降に順次加筆するであろう。