1、従来の民泊の規制と改正
(1)民泊と規制緩和(旅館業法許可、大阪や東京大田区国家戦略特区、農家泊)
民泊は京都では、旅館業法の許可が必要で、インターネットの仲介サイト等を介して,空き家や集合住宅の空き室などを宿泊客に提供する,いわゆる「民泊」は、自宅の一部を提供する場合であっても,「宿泊料とみなすことができる対価を得て人を宿泊させる業を営む場合」には,旅館業法第3条に基づく許可を受ける必要がある。
この「民泊」については,国において規制緩和の議論等がなされているが,京都市においては,旅館業法の許可を受けずに,営業することはできず、旅館業法をはじめ,消防法,建築基準法など関係法令の必要要件を満たし,旅館業法の許可を受けないと違法営業になる。旅館業法違反には,罰則も規定され、実際に京都では京都府警による逮捕者が出ている。
もっとも、国は平成28年4月から面積要件などを緩和し、無許可営業や近隣住民とのトラブルが問題になっている民泊だが訪日客の受け入れに向けて拡大していく方針で、東京都大田区や大阪府が国家戦略特区の規制緩和で民泊を旅館業法の適用除外とし一定の基準で認めている。
京都の山田知事はその可能性を否定していた。京都府中丹地域の農林漁家民宿・民泊等が可能なのみである。
(2)民泊申請のコンプライアンス
1)旅館業
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」で、「宿泊料」を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けない。
なお、旅館業がアパート等の貸室業と違う点は、(1)施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること、(2)施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことにある。
2)旅館業の許可種類
旅館業法では、旅館業を次の4つに分類
1)ホテル営業:洋式の構造及び設備を主とする施設で人を宿泊させる営業
2)旅館営業:和式の構造及び設備を主とする施設で人を宿泊させる営業
3)簡易宿所営業:宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設で人を宿泊させる営業
4)下宿営業:施設を設け、1月以上の期間を単位として人を宿泊させる営業
⇒法改正:旅館業法では、旅館業を次の3つに分類しています。
(1)旅館・ホテル営業:施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿泊営業及び下宿営業以外のもの
(2)簡易宿所営業:宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの
(3)下宿営業:施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業
3)「民泊サービス」とは
一般的には、住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供することを指す。
⇒法改正:法令上の定めはありませんが、住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供することを指します。住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業の届出を行う場合や、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除くと、簡易宿泊営業として旅館業法上の許可を取得して実施する場合が一般的です。
4)個人が自宅の一部を利用して人を宿泊させる場合は、旅館業法上の許可が必要である。
⇒法改正:個人が自宅や空き家の一部を利用して行う場合であっても、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には、住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業法上の許可が必要です。
5)旅館業に該当する「営業」とは、「社会性をもって継続反復されているもの」で、知人・友人を宿泊させる場合は、社会性がなく旅館業法上の許可は不要であろう。
⇒法改正:ただし、「知人」「友人」と称していても、事実上広く宿泊者の募集を行い、繰り返し人を宿泊させる場合は、住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業法上の許可が必要です。
6)インターネットを介して知り合った外国の方が来日した際に、自宅の空き部屋に泊まってもらい、お礼としてお金をもらった。この場合には、日頃から交友関係にある外国の方を泊められる場合は、許可が不要であろうがインターネットサイト等を利用して広く宿泊者の募集を行い、繰り返し人を宿泊させ得る状態にある場合は、「社会性をもって継続反復されているもの」に当たるため、宿泊料と見なされるものを受け取る場合は、旅館業の許可を受ける必要がある。
⇒法改正:宿泊料と見なされるものを受け取る場合は、住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業の許可を受ける必要があります。
7)営利を目的としてではなく、人とのコミュニケーションなど交流を目的として宿泊させる場合でも、それだけでは旅館業法の対象外とならないため、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には、旅館業法上の許可が必要である。
⇒法改正:「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には、住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業法上の許可が必要です。
8)土日のみに限定して宿泊サービスを提供する場合であっても、宿泊料を受けて人を宿泊させる行為が反復継続して行われ得る状態にある場合は、旅館業法上の許可が必要である。
⇒法改正:住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業法上の許可が必要です。
9)「宿泊料」ではなく、例えば「体験料」など別の名目で料金を徴収しても、それが実質的に寝具や部屋の使用料(休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費など)に相当すれば旅館業法上の許可が必要である。
⇒法改正:住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業法上の許可が必要です。
10)旅館業法上の許可を受けないで、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」を行った場合は、旅館業法第10条により、許可を受けないで旅館業を経営した者は、6月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処することとされている。
⇒法改正:旅館業法第10条では、許可を受けないで旅館業を経営した者は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとされています。
11)旅館業法上の許可を受けるには、使用する予定の施設の所在する都道府県(保健所を設置する市、特別区を含む。)で申請の受付や事前相談等を行っている。
12)平成28年4月から規制緩和が行われ、「民泊サービス」の営業ができるようになったが、「民泊サービス」の場合であっても、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には旅館業法上の許可が必要である。
なお、今回の規制緩和により、簡易宿所営業の許可要件である客室延床面積(33平方メートル以上)の基準を改正し、一度に宿泊させる宿泊者数が10人未満の施設の場合には、宿泊者1人当たり面積3.3平方メートルに宿泊者数を乗じた面積以上で許可を受けられる。
一度に宿泊させる宿泊者数が10人未満の小規模な施設により簡易宿所営業の許可を取得する場合は、玄関帳場等(いわゆるフロント)の設置を要しない。
⇒法改正:「民泊サービス」の場合であっても、「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には、住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行うか、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける場合を除き、旅館業法上の許可が必要です。
13)一部の自治体では、条例でフロント(玄関帳場)の設置が義務付けられているので各都道府県等の旅館業法担当窓口で確認する。京都市は必要である。
⇒法改正:国からの通知でフロントについては 以下のAからCをいずれも満たし、宿泊者の安全や利便性の確保ができる場合には、玄関帳場等を設置しなくてもよい。
A.事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10分程度で職員等が駆けつけることができる体制を想定しているものであること。
B.営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や出入りの状況の確認を常時鮮明な画像により実施すること。
C.鍵の受渡しを適切に行うこと。
しかし、京都市は、9人以下の1組が利用する一棟貸しの簡易宿所を対象に、改正旅館業法に伴う国の通知に基づき、施設外への設置を認める一方、家主不在型の民泊と同じく「駆け付け要件」を義務づけ、施設まで10分以内で行ける場所への従業員らの駐在を求めて規制を強化している。京町家を使った小規模施設(9人以下の1組向けの一棟貸し)は条例改正前と同様にフロントの設置を免除するが、駆け付け要件の適用対象には含める事としたのだ。
14)「民泊サービス」の営業許可を受けようとする場合は、ご自身の所有する建物を使用する場合と他者から建物を借り受けて実施する場合、いずれの場合でも営業許可を受けることは可能である。
ただし、他者から建物を借り受けて営業を行う場合は、賃貸借契約において、転貸(又貸し)が禁止されていないことや、旅館業(「民泊サービス」を含む。)に使用することが可能となっていることを貸主や賃貸住宅の管理会社に確認する。なお、賃貸借契約において、旅館業(「民泊サービス」を含む。)としての使用が可能な場合であっても、使用予定の建物が所在する地域において旅館業の立地が禁止されている場合があり、建築基準法の用途変更の建築確認の手続きが必要となる場合がある。
15)分譲マンションを所有している場合に、空いている部屋を使って簡易宿所の許可を受けて、「民泊サービス」を実施することは可能であるが、マンションの管理規約等で用途を制限可能性があり、管理規約等を確認する。トラブル防止の観点から事前に管理組合に相談する。
なお、管理規約上は、旅館業(「民泊サービス」を含む。)としての使用が可能な場合であっても、やはり使用予定の建物が所在する地域において旅館業の立地が禁止されている場合があり、建築基準法の用途変更の建築確認の手続きが必要となる場合もある。
16)「イベント民泊」とは、年1回(2~3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、イベント開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いものについては、旅館業法の営業許可を受けずに宿泊サービスが提供できる。
(厚生労働省参照HP)
2.旅館業法の改正(平成30年6月15日施行)
◆旅館業法の一部を改正する法律の概要(平成29年12月8日成立、12月15日公布)
旅館業の健全な発達を図り、公衆衛生及び国民生活の向上に寄与するため、ホテル営業及び旅館営業の営業種別を旅館・ホテル営業へ統合して規制緩和を図るとともに、無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の創設及び罰金の上限額の引上げ等の措置を講ずる。
(1)ホテル営業及び旅館営業の営業種別の旅館・ホテル営業への統合
ホテル営業及び旅館営業の営業種別を統合し、旅館・ホテル営業とする。
(2)違法な民泊サービスの広がり等を踏まえた無許可営業者等に対する規制の強化
1) 無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の権限規定の措置を講ずる。
2) 無許可営業者等に対する罰金の上限額を3万円から100万円に、その他旅館業法に違反した者に対する罰金の上限額を2万円から50万円に引き上げる。
(3)旅館業の欠格要件に暴力団排除規定等を追加
3.住宅宿泊事業法の制定(平成30年6月15日施行)…民泊新法
(1)法案の背景
ここ数年、民泊サービスが日本でも急速に普及、多様化する宿泊ニーズ等への対応、公衆衛生の確保や地域住民等とのトラブル防止、無許可で
旅館業を営む違法民泊への対応 等
(2)住宅宿泊事業者に係る制度の創設
① 都道府県知事への届出が必要
(年間提供日数の上限は180日(泊)とし、地域の実情を反映する仕組みの創設)
② 住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等)を義務付け
③ 家主不在型の場合は、上記措置を住宅宿泊管理業者に委託することを義務付け
④ 都道府県知事は、住宅宿泊事業者に係る監督を実施
ただし、都道府県に代わり、保健所設置市(政令市、中核市等)、特別区(東京23区)が監督(届出の受理を含む)・条例制定措置を処理できる
(2)住宅宿泊管理業者に係る制度の創設
① 国土交通大臣の登録が必要
② 住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置(住宅宿泊事業者への契約内容の説明等)の実施と1②の措置(標識の掲示を除く)の代行を義務付け
③国土交通大臣は、住宅宿泊管理業者に係る監督を実施
3.住宅宿泊仲介業者に係る制度の創設
① 観光庁長官の登録が必要
② 住宅宿泊仲介業の適正な遂行のための措置(宿泊者への契約内容の説明等)を義務付け
③ 観光庁長官は、住宅宿泊仲介業に係る監督を実施
○公布 平成29年6月16日 ○施行期日 平成30年6月15日