三菱自動車MMCは「リコール隠し」⇒「燃費不正」⇒「?」と不祥事はいつまで続くのか コンプラ合唱 形だけ

1.三菱自工(MMC)の燃費不正事件‥‥具体的不祥事事例

(1)連続した三菱自動車での自動車製造・販売に関する不祥事

①三菱リコール隠し

2000年と2004年に発覚したリコール隠し、不適切な改修による火災事故。⇒映画「空飛ぶタイヤ」2018公開

②軽自動車エンジンのリコール問題

2005年のオイル漏れの不具合に関する三菱自動車・3G83エンジンに関する問題。

③燃費試験の不正事件

2016年、日産自動車との合弁会社であるNMKVで開発した軽自動車のJC08モード燃費試験について、燃費を実際よりも良く見せるため、国土交通省に虚偽のデータを提出していた。

該当の車両は、三菱ブランドでは「eKワゴン」「eKスペース」、日産ブランドでは「デイズ」「デイズルークス」であった。協業先に当たる日産自動車が、前記該当車の燃費を実際に測定したところ、届出値との乖離がみられ、燃費不正が発覚した。

実際よりも、5〜15%程度良い燃費を算出しており、軽自動車の業界基準であるJC08モードで30 km/1 L以上という水準に見せかけていた。該当車種は即日販売及び出荷停止となった。 さらに、軽自動車に限らず1991年(平成3年)以降に発売した全て車種において、違法な方法で燃費試験をしていたことも明らかになった。さらに1991年(平成3年)から25年間に渡り、10・15モード燃費で計測した燃費データの偽装をしていたことが発覚した。

※日産自動車関連会社へ私が行ったときに、窓口で繰り返し日産は被害者であると主張していたのが印象に残る。

(2)不正の方法は、控えめに見ても「かなり悪質」

・「高速惰行法」と呼ばれる、違法な測定方法による走行抵抗の測定
・試験結果の中から「恣意的に低い値だけ」を抽出し、燃費値に有利な走行抵抗値を捏造
・成績表に記載すべき日付や天候の捏造
・走行試験により求めなければならないデータの机上計算による算出
・異なる車両の測定結果を恣意的に組み合わせたデータの算出

これら定められた作業工程を無視した手抜きの実行行為は、ある意味「傲慢」または「不遜」さらには「天狗」だ。

(3)これについては、詳細な第三者委員会の報告書がある。

【燃費不正問題に関する調査報告書】2016 年(平成 28 年)8 月 1 日 特別調査委員会(委員長 渡辺恵 一
委員 八重樫武久、委員 坂田吉郎、委員 吉野弦太)

一部引用すると、

「‥他部門や他部署の業務に関心を持たないということは、ひいては、他部門や他部署で不祥事が発生しても、そのことにも関心を持たないということになりかねない。当委員会は、MMC において、本件問題は開発本部の中の性能実験部及び認証試験グループにおける不祥事であり、経営陣や他部門あるいは開発本部内の他部署の問題ではないという意識が生じているのではないかということを非常に懸念している。改めて、ここに、本件問題は、性能実験部及び認証試験グループ、さらには開発本部だけの問題ではなく、経営陣をはじめとする MMC 全体の問題であることを強調しておきたい。‥‥

MMC にとって、最も大事な再発防止策は、そこで働く人たちの思いが一致することである。そのためには、MMC はなぜ自動車メーカーであったのか、なぜ自動車メーカーであり続けなければならないのか、どのような自動車を開発しこの世に送り出したいのか、そういうことをとことんまで話し合い、一つの共通する理念を見つけ出し、それに共鳴する者の集団になることである。自動車を製造して販売することは、単なる利益追求のツールではない。ユーザーも、開発する者も、製造する者も、販売する者も、みんながワクワクする自動車をこの世に送り出すこと、それこそが自動車メーカーとして忘れてはならない矜持なのではないか
本件問題は、決して、MMC の特定の経営陣や特定の役職員が起こした問題ではない。開発本部、あるいは性能実験部や認証試験グループが起こした問題として矮小化してはいけない。MMC が起こした問題は、MMC が、会社として起こした問題であり、その責任を、すべての経営陣と役職員が自分の問題として受け止めるべきである。

以上を前提に、当委員会は、再発防止に向けた 5 つの指針を示す。繰り返しになるが、今の MMC にとって重要なのは、委員会の示す指針にただ従うのではなく、全社一丸となって、今の MMC にとって必要な再発防止策を自ら考え、それをどうすれば浸透させていくことができるかを、自ら模索して実行していくことである。そのような観点から、当委員会としては、個別・具体的な再発防止策を提示するのではなく、あくまでも、MMC が自ら再発防止策を考えるにあたって骨格となるべき指針を示すこととする。
① 開発プロセスの見直し
② 屋上屋を重ねる制度、組織、取組の見直し
③ 組織の閉鎖性やブラックボックス化を解消するための人事制度
④ 法規の趣旨を理解すること
⑤ 不正の発見と是正に向けた幅広い取組
‥」

2.不祥事の連続する組織の共通性

以上のように、連続した不祥事が止まらないのは、上記に述べたように、一人一人がそのコンプライアンスの再構築にかかわって、納得感が出ていないことに最大の理由があるのではなかろうか。個々人の「参加」がないから。

大阪のO市役所で、お正月に小口金庫を開けてお金を盗む事件が起こって、小生がその再発防止の相談を受けたが、二度とこのような不正が起きないように屋上屋を重ねるチェック体制を取っていた。

「課長さん、これではやり過ぎでないですか、現場で不満も出ていませんか」

「そうなんですよ。それでは‥」

という話になった。

同じことが三菱自動車のコンプライアンスでも発生した。

組織は人が動かすので、官庁であろうと民間であろうとそのポイントは変わらないであろう。

3.内部統制・リスクマネジメントの視点の欠如

この三菱自動車の第三者委員会の報告書は、既にこのサイトで「関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた問題」の第三者委員会の報告書よりは、メカに詳しい専門家が委員にいたこともあって、燃費不正の具体的な記述は説得力はあるが、youtube等で指摘しておいたように、内部統制の枠組みの仕方の問題や3つのデフェンスラインが当たり前になっているCOSO基本のリスクマネジメントの視点が欠如している大きな問題点があるのに、高い評価を与えている格付け委員会の公表文書を読んでももあまりそのことを指摘していない。

蛇足ながら、著名な弁護士が、コンプライアンス態勢の再構築で選任されることが多い。関西電力のコンプライアンス立て直しの中核メンバーなどもそうであるが大丈夫であろうか。法に詳しくてもマネジメントの経験がないと難しくないか。

コンプライアンスの実力判断で、どうしても世間的な認知の度合いや肩書などが決め手になっているようであるが、私は漱石の晩年の言を信じて自ら「巷間の巨人」を信じたい。

4.三菱自動車の再建はルノー、日産提携が決め手か、コンプライアンスの正面突破はしないのか。逃げるな三菱。

コンプライアンスの考え方や仕組みの構築等の今日的な進歩は目を見張るものがある。

規範志向か、バリュー志向か、はたまた、行動心理学の利用か、或いはAI活用での不正防止かなど、手はいくらでもあろう。

それを、どこか大きいところと提携して済まそうとするのは卑怯ではないか。

逃げるな三菱。

コンプライアンスについての顧問弁護士などはなにも感じないのか。

コンプライアンスの問題は、コンプライアンスの正面突破で解決しないでいいのか。

社会は見ているよ、肝心なところ。「悪いところを本当に直そうとしているか」という道徳の、人間の基本を。

それが、真のコンプライアンス・リスク管理だ。

(2022年10月3日の東京新聞に掲載された私のインタビュー「コンプラ」合唱でも形だけ』も参照されたい)

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