1.企業の労働法務とコンプライアンス筆頭サービス残業対策
(1)東京での労働法務とコンプライアンス講演での終わってからの質疑応答
生の声の中では「サービス残業」についてが最多であった。
かなり、生々しいあとまで心に引っかかる事例もあった。
労働法務に関するコンプライアンス研修講師を務めた後でも最も多い相談がサービス残業で、次いでハラスメント、問題社員である。
(2)サービス残業がなぜ発生するのか
・労働者に残業申請を行わせない
・自宅持ち帰りなどの職場外での仕事の強制
・柔軟勤務時間体制の裁量労働制の違法利用
・管理職に昇進させて、時間規制を外す
・管理職の帰宅拒否症候群による部下の半強制残業
等々であろう。
2.サービス残業防止対策その1
(1)残業は管理職の指示で行う。
管理職のタイムマネジメントの問題が究極にある。
管理職を指導するのは経営者で、ここが最大のポイントであろう。
管理職は、ヒトを使うときには、労働基準法等のコンプライアンス遵守が大切なことは十分に分かっているであろう。
(2)労働時間短縮の実現方法
問題は自分の労働現場での実現の方策である。
どうすれば、残業を削減できるかを絶えず考えつつ強い部署を作る必要がある。
経営者は、サービス残業をさせた管理職については、懲戒処分も検討する覚悟がないと徹底しない。
また、部下が残業したいときは必ず残業の理由を報告させて、承認を与えてからにする職場ルールを作ろう。
3.サービス残業防止対策その2
(1)タイムカード管理
タイムカードは出退勤時刻管理でなく、始業・終業時刻管理とする。
タイムカードを打つなり休憩という方はいないか。いつまでも帰らない管理職はいないか。
(2)時間の繰り上げ繰り下げ
始業時間と終業時間の繰り上げ・繰り下げや休憩時間の活用をする。
仕事の性質上、例えば夕方6時の終業時間には終わらずに夜9時まで居残りをする必要が生じる場合に、別途6時から休憩を30分与えれば、3時間でなく2時間半の残業となる。
始業時間と終業時間の繰り上げ・繰り下げを活用する方法も同じことである。
(3)給与体系の変更の活用
給与基準を見直し、給与の表示方法を残業代込みとする。
例えば、残業時間の20時間分などを含んだ給与体系にする
(4)非常勤などの活用
残業相当業務を、パートタイマーや業務請負契約等を活用する。
(5)変形労働時間制の採用
1年単位の変形労働時間制を導入する
これが、本命的な対策であろうか。
労働期間は1日8時間、1週40時間以内が原則であるが、変形労働時間制を導入すれば、例外的に1日8時間、1週40時間を越える所定労働時間が可能になる。
ただ、労使協定の締結または、就業規則の見直しが必要になる。
1週間単位や、1ヶ月単位の変形労働時間制もあるが、1年単位の変形労働時間制が余裕があってベストであろうか。
1年以内の期間を平均して、1週当たりの労働時間を40時間以内とする前提で、ある特定の日や特定の週を1日8時間、1週40時間を越えた所定労働時間を設定し、各所定労働日の労働時間は原則10時間、週の所定労働時間は52時間以内の内容にする必要がある。
詳しく言えば、1年あたりの労働日数280日(年間休日85日)、1日あたりの労働時間10時間まで、1週間あたりの労働時間52時間まで、原則連続で労働できる日数連続6日、特定的に連続で労働できる日数1週間に1日の休み(最大連続12日) である。
4.時間外労働として割増賃金の支払いが必要な場合
(1)時間外割増
◆時間外労働……「法定労働時間」を超えて働かせた場合、2割5分以上の割増を支払う必要がある。
(2)休日割増
◆休日労働……「法定休日」に働かせた場合、3割5分以上の割増を支払う必要がある。
なお、「法定休日」は、原則1週間に1日の休みだから、土・日休みの会社で土曜日のみ出勤させたとしても、日曜日に休みを与えられれば、休日労働の割増は必要はなくなる(週40時間内で)。
(3)深夜割増
◆深夜労働……22時~5時の間に働かせた場合、2割5分以上の割増を支払う必要がある。
なお、管理監督者にも、「深夜労働」は発生する。
また、法の重複適用事例として「時間外+深夜」「休日労働+深夜」という場合もある。
5.まとめ 労働法務とコンプライアンス
いま、企業法務コンプライアンスの中で、労働現場でのコンプライアンス態勢の確立が厚生労働省の指導もあって緊急課題なっている。
その中で、サービス残業問題が過労死などを生む元凶として最大問題になっている。
最近もたとえば、「西日本高速で男性過労死 神戸新聞NEXT2016年1月25日」‥時間外勤務は最大月178時間に達し、退勤から次の出勤まで8分しかない異常な勤務記録
電通事件など多数の事例があっても会社・役所は変わらない苛立ちが国民にはある。
労働現場での自殺が増えている現状はどうすればストップできるのか。
さらに、厄介なことには、パワーハラスメントやセクシャル・ハラスメント訴訟も増える一方である。
どれだけの人が泣いているか苦しんでいるか。
これは、経営者の労働環境配慮義務違反なので法的責任も、もちろんある。
従業員は重要なステ-クホルダ-と認識して、不祥事発生したら、インテグリティも重視して対応しよう。
integrityも含めたトータルなコンプライアンス態勢があれば、再発は防げる。
誰にも組織にも間違いはあるのだが、学習しない人、組織に明日はない。