1.労働法務とコンプライアンスの関係

(1)疲弊する日本の労働現場

労働現場でのコンプライアンス態勢の確立は今や官民を問わず待ったなしの課題であろうか。

サービス残業や名ばかり管理職、派遣切り等の問題は全く解決していない。これは、いったい今後はどうなるのであろうか。

このまま放置して格差を助長してもいいのであろうか。

また、労働現場での自殺が増えている現状はどうすればストップできるのであろうか。

パワーハラスメントやセクシャル・ハラスメントは増える一方である。

どれだけの人が泣いているか苦しんでいるか。

(2)労働法務に重点を置いたコンプライアンス態勢の再構築

労働現場のルールの順守を第一の目的として、コンプライアンス態勢の再構築をお図るべきでなかろうか。

労働生産性は、OECDのデータでは、

日本の時間当たり労働生産性は、49.9ドル。OECD加盟38カ国中27位。G7の中で最下位である。

また、日本の一人当たり労働生産性は、81,510ドル。OECD加盟38カ国中29位。日本の製造業の労働生産性は、92,993ドル。OECDに加盟する主要35カ国中18位。

(※OECD:「Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構」加盟国は35か国でEU加盟の22か国と日本、アメリカ合衆国、カナダ、韓国など13か国)

(※G7:Group of Seven 先進 7 か国のアメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア)

労働三法・労務管理等のコンプライアンスの勘どころと労働法関連のコンプライアンス事例演習が必要である。

特に以下の項目が改善すべき重要項目である。

2.労働法務コンプライアンス態勢の重要項目

(1)サービス残業などの労働法コンプライアンスのホットテーマの集中理解

具体例その1「サービス残業等の経営者の労働環境配慮義務」

■サービス残業は以下の方法で行われる。

①労働者に残業申請を行わせない

②自宅持ち帰りなどの職場外での仕事の強制

③柔軟勤務時間体制の裁量労働制の違法利用

④管理職に昇進させて、時間規制を外す(形だけ管理職)

⑤管理職の帰宅拒否症候群による部下への半強制残業(道連れ残業)

■労働者の対策として

労働基準監督署への告訴 、未払賃金請求訴訟

が最も効果的であろうか。

(2)従業員は重要なステ-クホルダ-

コンプライアンスの基本的な考え方として、ステークホルダーの信頼を考えるのであれば、コンプライアンス再構築しインテグリティも重視する。

integrity(廉潔性)も含めたトータルなコンプライアンス態勢があれば、防げる

(3)労働三法や労務管理知識

①法の知識等

労働三法等の労働法の内容と労務管理に関する必須のコンプライアンス知識と重要判例等の知識を習得する。

管理職は特に法の知識が大切で、

②労働三法等の労働法の内容

労働基準法、労働組合法、労働関係調整法と労働契約法

③新労働関係重要法

男女雇用機会均等法、公益通報者保護法、労働者派遣法、パートタイム労働法

④労務管理の重要判例等の知識も含む

(4)労働法務の事例演習

個別事例の演習はたっぷりやる。例えば、次のものは外せないであろう。

パワハラ・セクハラ

内部告発

強制解雇

労働条件不利益変更

配置転換など

(5)問題社員の対応方法

コンプライアンス上は、職業倫理もその内容に入るので、問題社員への対応もきちんとやろう。

無断欠勤

言葉使い

私生活でのトラブル

情報漏洩

ブログで会社批判等

(6)労働法チェックリストの作成練習

研修を踏まえて職場と自己のチェックリストを作成

①労働三法についての一般的なコンプライアンスのチェックリスト

②労働現場でのより具体的チェックリスト

以上がおおまかな労働法務に関するコンプライアンス態勢の必須項目である。

しかし、コンプライアンスに関する基本的な考え方のしっかりしてないところに労務管理のみを載せても無意味であろう。

抜本的な組織のコンプライアンス態勢は簡単にはできないことを肝に銘ずべきである。