1.企業法務とコンプライアンスの関係
今日では、企業法務はコンプライアンスの中の一環を占めるようになり、企業の底力になる役を担っている。
コンプライアンス上の疑義があるときには、企業の法務部門は即答が出来るようにならなければならない。
そのためには、役所であるが大阪の堺市などのように、各部門に法務の責任者(担当者)が常置することとなっているような制度設計が必要であろう。
また、一般社員でもコンプライアンスがこのように重視される時代になっている現在、下記のような研修プランで職員全体の能力を向上させるのはどうであろうか。
なお、管理職対象、中堅幹部対象、一般社員対象などの「階層別・対象別」研修も有効である。重点の置き方が異なることとリーダーシップ等項目の追加などがある。
2.企業内での「企業法務とコンプライアンスの研修」お勧めプラン
(1)コンプライアンス研修の概略
①研修の狙いの置き方
・会社経営にあたって必要とされる法務の重要ポイントをおさえる。
・まずは、会社法務の基本法である「会社法」の基本と実務上の重要ポイントを押さえる
・殊に、会社法の内部統制についての法規制の枠組みを法務省令も含めて理解する。
・企業を巡る法規制には会社法のみならずJSOX法といわれる金融商品取引法をはじめとした多数の法がある。
一通りそれらに触れ、自己の現在の業務、組織全体の業務の関連を考える。
・監督官庁等からの「ガイドライン・監督指針・検査(監査)事項等」も「ソフトロー」としてコンプライアンス内容であるので参考にする。
・業界内の自主規制、例えば上場企業であれば証券取引所のコーポレート・ガバナンス、スチュワードシップ等の参考は必ずする。
・内部監査機構、公認会計士団体等のモニタリング事項も参考にする。
・COSOフレームワークとその内容にも、可能な範囲で触れる。
・ERMも同様。
・コンプライアンスはリスクマネジメントと職業倫理と一体化しているので、両者をバランスよく織り込む。なお、両者とも専門性が高くなっている。テキスト読み上げ講師は絶対にダメである。
②修得目標
・会社経営に関する法規制の枠組みを、内部統制は特に深く、理解できた状態になる。
③標準研修日数および1クラスの人数
3日(連続3日又は五月雨式で3日)
25名/クラス…指名したりするの適度な人数
④事前課題
・当日は必ず、小型六法でいいので持参することと、事前に民法や会社法の条文に軽く目を通す。
・企業コンプライアンスの基礎事項のチェック問題といくつかの事例を事前課題とする。
⑤教材名と講師
「現代社会における企業法務とコンプライアンスの勘どころ」等、パワーポイントによる図解と事例集、上記の事前課題とその解答等も備える。
講師は、内部であれば法務部長(取締役)若しくはコンプライアンス統括責任者や担当部長(取締役)、外部であればコンプライアンスの専門家で実績のある者に依頼する。
(コンプライアンス研修をやった言い訳になるような研修は時間とお金の無駄で、研修会社に依頼してテキスト読み上げる講師で済ませる愚はしない。講師実績も参照)
(2)コーポレート・ガバナンスと法(コンプライアンス研修1日目)
1.コーポレイト・ガバメント
(1)コンプライアンス
(2)エシックス
(3)インテグリティ
…企業は営利のみを追求すればいいのか。否である。市場ルールの根底にある思想と理論を学ぶ。
2.コーポレート・ガバナンスと法
(1)企業活動のコンプライアンスを基礎づける最重要な法律
(2)法に加えて必要なビジネスエシックス内容
(3)不祥事発生時の決め手になるインテグリティ
…コンプライアンスを義務づける会社法・、会社法施行規則、金融商品取引法・公益通報者保護法・男女雇用機会均等法及び中央官庁の多数のガイドラインや監督指針等の内容を盛り込む
3.企業取引に関す法規制
(1)私法の一般法である民法の取引規制
・民法の基本法規制
・物権法と債権法
※民法の抜本改正(債権法)
…私法の一般法では、取引に関する法規制をいかに定めているのであろうか。それを、特別法である商法や会社法はどのように修正しているのであろうか。そこでの、キーワードは何であろうか。
(2)特別法の商法(会社法)による取引規制
(3)企業の経済活動と法(コンプライアンス研修2日目)
1.公正な競争市場の形成にかかわる法
(1)独占禁止法
(2)不正競争防止法
…自由主義経済下での公正競争を守る独占禁止法は、その存在が従来にも増してクローズアップされている。その、概要と研修企業の影響分野におけるポイントを学ぶ。また、不正競争防止法は営業主体の誤認防止等の独占禁止法にも勝るとも劣らいない重要性が出てきており従来の企業の営業秘密の法規制と相まって正確な理解が必要である。
2.消費者保護の特別法
…消費者契約法、特定商法取引法の規制
3.景品表示法他
…消費者保護の現代的法規制を概観し、消費者保護の表示に関する規制である景品表示法他も学ぶ。
なお、食品関連産業であれば、食品衛生法やJAS法の他に表示統一法の「食品表示法」も参考にする。
4.企業と損害賠償法理
(1)私法の一般法である民法の法理
(2)特別法の商法(会社法)による修正法理
…私法の一般法では、取引関係になるものの債務不履行責任をどう定め、第三者に関する不法行為責任に関する損害賠償をいかに定めているのであろうか。それを、特別法である商法や会社法はどのように修正しているのであろうか。そこでの、キーワードは何であろうか。
(3)特別法による損害賠償法理の修正
…失火責任法等の特別法は民法の原則をいかに修正しているであろうか。
5.労働に関する法規制
(1)憲法と労働法
(2)労務に関するコンプライアンス
(3)インサイダー取引規制
労働に関する法規制を憲法規定から労働法全般を概観する。日本の労働現場は病んでいると言われる。働き方改革法案、残業規制、ハラスメント防止、非正規労働者差別など問題が山積みしている。
働くことが人生における自己実現であることを踏まえて、抜本的な労働ルール改定が求められている。
また、インサイダー取引は古くから日本人の嫌う「役得」である。倫理批判は強い。
6.紛争解決
(1)調停や訴訟制度
(2)ADR
…企業活動に伴う紛争解決方法を概観する。民事調停法や民事訴訟法や非訟事件訴訟法等も概観する。
7.企業活動と国際取引
(1)契約法理と国際私法
(2)国際的紛争解決
…国際取引の基本的法規制を概観する。国際的な仲裁制度や裁判管轄権も確認する。
(4)企業と情報化社会の法等(コンプライアンス研修3日目)
1.情報化社会における法規制
(1)個人情報保護法
(2)不正アクセス禁止法
(3)電子メール規制法
(4)電子認証法
…著しい科学の進歩によって、IT化社会が進み、インターネットの普及とデジタル化社会の中で行われている法規制を概観する。個人情報保護法については、その重要性にかんがみやや詳しく学ぶ。
2.環境と法
環境基本法や廃棄物処理法等
…環境に関する法規制を概観する。
3.企業と犯罪
(1)刑法の関連規制
(2)特別法の商法(会社法)の法規制
…犯罪に関する刑法と刑事訴訟法の基本的理解を深める。商法違反の判事も概観する。
4.企業と知的財産法
(1)著作権法
(2)商標法その他の産業財産権
…なぜ、著作権法違反は損害賠償額が膨らみ、法定刑が10年以下の懲役等と大変厳しくなったのであろうか。産業財産権にはいかなるものがありその法規制はどうなっているのであろうか。
3.コンプライアンス研修で行う演習・ワーク
1.コーポレート・ガバナンスと法の演習
…コンプライアンスに関する基本的事項を学ぶ。(民法、会社法等中心)
2.企業活動と法の演習
…企業活動と法の基本的事項を学ぶ(独禁法・不正競争防止法や労働法等)
3.情報会社会と法の演習
…情報会社会と法の基本的事項を学ぶ
(個人情報保護法、刑法、著作権法や商標法等)