クレーム対応で不本意な念書(覚書)を書いた絶体絶命のピンチを切り抜ける方法

1.コンプライアンスの重要テーマ「クレーム対応と不本意な念書」とは、

(1)「念書」は「証拠文書」で、実務価値は極めて高い

法務実務上は、「念書」は非常に価値の高い、ある意味決定的な、その内容通りの約束をした「証拠文書」である事を確認すべきであろう。

文書に書かれた約束文言を覆すことは通常はできない。

それは、たとえクレーマーが強引に念書を要求した結果、やむを得ず「誠意をもって、すべての損害を賠償させていただきます」というような賠償約束の念書を取られたとしても、

強要だとか、

錯誤だとか、

軟禁状態であったとか

いろいろと否定することを後から言っても、簡単には効力は否定できない。

暴力団事務所で書いたとかいうならともかく、現在の書面重視の裁判実務・法律実務のもとでは、現実に署名のある文書がある限りその効力否定は極めて困難であろう。

たとえ、印鑑が押捺されてなくても、署名だけでも十分に証拠となる。

訴訟現場はもちろん、証拠裁判主義。

(2)暴利行為や権限がないのに署名した場合

もちろん、窓口で要内「非常識な」程度のことをを言ったからと「暴言で傷つけたお詫びに100万円を支払います」等のだれが見ても極端な暴利行為の場合や窓口対応の末端職員で権限がない場合などは念書を書いても払う必要はないであろう。

しかし、それもいったん念書を書いたのであればしっかりと証明する必要がある。

また、後者は民法の109条以下の表見代理行為として有効になることがある。

(3)会社等だけでなく私生活でも念書を書かざるを得ない場面に遭遇する

それは、色々な事情がある。

私も、NTTが近所の新築の家の電話線新設工事で、請負会社のクレーンが新車をまともに潰して、往生した時に、交渉の過程で大阪の中央大学出身の○法会出身のH弁護士が出てきて、当初の相手の誠意ある行動を全く無視して新車の価値の大幅な減少を全く考慮に入れずに一方的に文書を送ってきて、電話で怒鳴られ、一体これは何かとびっくりしたことがある。さすがに親友の弁護士に相手の弁護士調査を依頼した。弁護士にもやくざみたいなのがいると初めて知った。

しかしながら、自宅が舞台であったので、家内や子供が非常に怖がり、家族の手前、私もほとんど反論もせずにサインしたことが若い時にあった。

まあ、ほんとに私も今考えてもあの時に詰め寄られてサインすべきではなかったが、上にかいたような個人的事情でサインして処理を済ませた。残念至極。

2.念書を書かざるを得ない場面で多いのは

だから、人生経験のある人は分かるのだけれども、念書を書くときには、ほんとに様々な事情がある。

相手がとっても口達者なクレーマーであったとか、

法律家であったとか、

迫力負けしたとか、

苦手タイプも。

しかし、相手方の自宅とか事務所や密閉された空間ではこういうことが起きがちである。

その時に勇気を持って、

・すでに2時間以上経過したので帰らせてもらう

・会社の決まりで夜間は長い出来ない

・上司とも相談して決める必要があるので、帰らせてもらう

等々の言葉を勇気をもって言って帰るのがいい。

でも難しい。

慣れていない方は特にそうであろう。

3.念書を書いても、絶体絶命のピンチを切り抜ける唯一の方法

(1)数日中に念書の撤回通知を出そう

そこで、念書の撤回の通知を出すのはどうだろうか。

これは、前述の証拠裁判主義のもとでは一定の効果はある。

「撤回」とは、法律上は、意思表示自体の効力を否定せずに、将来に向かってその意思表示を一方的に否定するという意味である。
これは、法律上の無効・取消原因がないときには、撤回の文書を出せば、念書による約束内容の効力を事実上、否定できる。

ただし、できれば念書を作成した翌日に出すべきであろう。遅くとも数日内である。念書による裁判請求があれば手遅れになるので。

(2)コツは、撤回通知を2通出すこと

もちろん、配達証明付き内容証明郵便と普通郵便の2通を出す。私は依頼されると通常の時もそうしているが。

なぜか。

実務でしばしばあるが、

配達証明付き内容証明郵便の受領を拒絶する可能性があるので、

それに普通郵便でも郵送したと記載されていれば、

間接的に相手方は、同文の撤回通知を普通郵便にて受領したであろうことの証明ができるから。

Follow me!