1.食のコンプライアンス…食品の表示に関する重要法律
(1)今、「食のコンプライアンス」は非常にホットである。
食料自給率が40%に上がっても、内外の食品を、安全にとるための食品関係者や行政のコンプライアンス態勢の構築が急がれている。
つまり、食のコンプライアンスで最も重要なステークホルダーである消費者から「信頼」される、食品の提供が求められている。
(2)食品の表示
食品の表示は、消費者が食品を購入するとき、食品の内容を正しく理解し、選択したり、適正に使用したりする上で重要な情報源となっている。
このことから食品の表示は、JAS法、食品衛生法、景品表示法、計量法、健康増進法等により細かく規制されており、これらに違反すると厳しい行政処分や罰則を受けることになる。
さらに平成25年に「食品表示法」が新たに制定され、統一的な食品表に関するルールを定めている。
これまでの法律をまず概観しよう。
(3)食品衛生法
この「法律の目的」は、飲食に起因する衛生上の危害発生の防止である。
「表示対象」は、容器包装に入れられた加工食品である。一部生鮮品も含む。
「表示すべき事項」は、
名称、食品添加物、消費期限又は賞味期限、保存方法、製造者氏名、製造所所在地、遺伝子組換え食品、アレルギー食品である。
(4)農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
この「法律の目的」は、消費者の適切な商品選択である。
「表示対象」は、全ての飲食料品である。
「表示すべき事項」は、
原材料名(食品添加物を含む。)、原料原産地名、内容量、消費期限又は賞味期限、保存方法、製造業者等の氏名又は名称及び住所、原産国名(輸入品に限る。)、遺伝子組換え食品
(5)不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)
この「法律の目的」は、不当な表示による顧客の誘引の禁止である。
「表示対象」は、事業者の供給する全ての商品(食品)である。
(6)計量法
この「法律の目的」は、内容量等の表示である。
「表示対象」は、密封された特定商品である。
「表示すべき事項」は、内容量、表記者の氏名又は名称及び住所である。
(7)健康増進法
この「法律の目的」は、(ア)健康の保持・回復・向上、発育に役立てることと、(イ)健康の保持増進の効果等について虚偽・誇大な表示等の禁止である。
(ア)健康の保持・回復・向上、発育に役立てる目的の場合の表示
(a)「表示対象」が、販売される加工食品等で、邦文で栄養表示する場合においては、栄養成分、熱量が「表示すべき事項」になる。
(b)「表示対象」が、特別用途食品(病者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、高齢者用食品及び特定保健用食品)においては、
商品名、原材料名、賞味期限、保存方法、製造業者の氏名等、許可を受けた表示の内容、栄養成分量及び 熱量、許可証票、摂取方法等が「表示すべき事項」になる。
(イ)健康の保持増進の効果等について虚偽・誇大な表示等の禁止が目的の場合の表示
「表示対象」は、食品として販売に供する物で、「表示すべき事項」においては、健康保持増進効果等について著しく事実に相違する表示をし、又著しく人を誤認させるような表示をしてはならない、ことである。
(8)薬事法
この「法律の目的」は、食品に対する医薬品と誤認される効能効果の表示を禁止することである。「表示対象」は、容器包装に入れられた加工食品及びその広告である。
(9)各法律の関係
食品事業者は、販売に供する食品の内容について、各法律に適合するように表示をし、表示は各法律が要求している表示項目が1つにまとまって、表示が完成されているのが通常である。
各法律は、それぞれの目的に基づいて表示基準を定めているので、重複してしている項目は省略できるが、いずれにしろ各法律の要請を満たす必要がある。
2.食品表示法の制定
(1)平成27年4月1日施行 監督官庁:消費者庁
(2)制定趣旨
食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保するため、
食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設する。
(現行、任意制度となっている栄養表示についても、義務化が可能な枠組みとする)
そのために、
整合性の取れた表示基準の制定、
消費者と事業者双方にとって分かりやすい表示、
消費者の日々の栄養・食生活管理による健康増進に寄与、
効果的・効率的な法執行
(3)内閣総理大臣は、食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に選択するため、食品表示基準を策定
(4)食品関連事業者等は、食品表示基準に従い、食品の表示をする義務
その他、立ち入り検査や罰則などの定め実効性を図ろうとしている。
※詳細な個別の法律については、別稿を参照