「事業等のリスク」に主要リスクを記載しないと虚偽記載に。有価証券報告書法改正

1.金融商品取引法に「有価証券報告書」開示内容の改正

有価証券報告書は、金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料である。

このうち、金融商品取引法に基づく「企業内容の開示に関する内閣府令」が2019年3月に改正され、その改正の考え方を整理したプリンシプルベースのガイダンス「記述情報の開示に関する原則」と、既存の実務事例を紹介する「記述情報の開示の好事例集」が金融庁から公表された。

全面適用は2020 年3 月31 日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書が対象となる。3月決算の多くの企業がすでに対象だ。

2.有価証券報告書の主な記載事項の確認

1.企業情報
(1)企業の概況
①主要な経営指標等の推移
②沿革
③事業の内容
④関係会社の状況
⑤従業員の状況
(2)事業の状況
①業績等の概要
②生産、受注及び販売の状況
③経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
④事業等のリスク
⑤経営上の重要な契約等
⑥研究開発活動
⑦財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(3)設備の状況
①設備投資等の概要
②主要な設備の状況
③設備の新設、除却等の計画
(4)提出会社の状況
①株式等の状況(株式の総数、新株予約権の状況、大株主の状況など)
②自己株式の取得等の状況
③配当政策
④株価の推移
⑤役員の状況
⑥コーポレート・ガバナンスの状況
(5)経理の状況
・連結財務諸表等
①連結財務諸表
②連結貸借対照表
③連結損益計算書
④連結包括利益計算書
⑤連結株主資本等変動計算書
⑥連結キャッシュ・フロー計算書
⑦連結附属明細表
その他
・財務諸表等
①財務諸表
②貸借対照表
③損益計算書
④株主資本等変動計算書
⑤キャッシュ・フロー計算書
附属明細表
・主な資産及び負債の内容
その他
(6)提出会社の株式事務の概要
(7)提出会社の参考情報
提出会社の親会社等の情報 その他の参考情報
2.提出会社の保証会社等の情報
3.監査報告書

3.「企業内容の開示に関する内閣府令」2019年3月改正への対応方法

(金融庁HP一部引用)

(1)法令上の要求

事業等のリスクの開示においては、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクについて、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載するなど、具体的に記載することが求められている。また、開示に当たっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分かりやすく記載することが求められている。

(2)開示原則

事業等のリスクは、翌期以降の事業運営に影響を及ぼし得るリスクのうち、経営者の視点から重要と考えるもの
をその重要度に応じて説明するものである。
① 事業等のリスクの開示においては、一般的なリスクの羅列ではなく、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動、特定の取引先・製品・技術等への依存、特有の法的規制・取引慣行・経営方針、重要な訴訟事件等の発生、役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を具体的に記載することが求められる。その際、取締役会や経営会議において、そのリスクが企業の将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性に応じて、それぞれのリスクの重要性(マテリアリティ)をどのように判断しているかについて、投資家が理解できるような説明をすることが期待される。
② リスクの記載の順序については、時々の経営環境に応じ、経営方針・経営戦略等との関連性の程度等を踏まえ、取締役会や経営会議における重要度の判断を反映することが望ましい。
③ また、リスクの区分については、リスク管理上用いている区分(例えば、市場リスク、品質リスク、コンプライアンスリスクなど)に応じた記載をすることも考えられる。

(3)虚偽記載に該当する場合とは

「提出日現在において、経営者が企業の営業成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している
リスクについて敢えて記載をしなかった場合,虚偽記載に該当する」とされている(パブリックコメント参照)

4.リスクマネジメントの基本的枠組みであるISO31000やERM2017への早急な対応が必要

この件については、コンプライアンスの中川総合法務オフィスのサイトに詳細記述され、youtubeの中川総合法務オフィス公式サイトでも詳しく動画解説しているので参照されたい。

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