「会社法の一部を改正する法律」平成26年6月20日成立 コーポレート・ガバナンスの強化等

1.「会社法の一部を改正する法律」平成26年6月20日成立

(1)「会社法の一部を改正する法律」平成26年6月20日成立し,同月27日公布されている。

海外の投資家は好意的に見ているようである。

今一度、会社法実務の観点から重要であるので、改正法のポイントを再確認しておこう。

(2)なお、令和元年改正(2019年改正、2021年施行)は詳しくはこのサイト別稿参照。主な内容は

○ 株主に対して早期に株主総会資料を提供し、株主による議案等の検討期間を十分に確保するため、株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し当該ウェブサイトのアドレス等を書面で通知する方法により、株主に対して株主総会資料を提供することができる制度を創設する。

○ 株主提案権の濫用的な行使を制限するため、株主が同一の株主総会において提案することができる議案の数を制限する。

○ 取締役の報酬等を決定する手続等の透明性を向上させ、また、株式会社が業績等に連動した報酬等をより適切かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため、場会社等の取締役会は,取締役の個人別の報酬等に関する決定方針を定めなければならないこととするとともに、上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないこととするなどの規定を設ける。

○ 役員等にインセンティブを付与するとともに、役員等の職務の執行の適正さを確保するため、役員等がその職務の執行に関して責任追及を受けるなどして生じた費用等を株式会社が補償することを約する補償契約や、役員等のために締結される保険契約に関する規定を設ける。

○ 我が国の資本市場が全体として信頼される環境を整備するため、上場会社等に社外取締役を置くことを義務付ける。

○ 社債の管理を自ら行う社債権者の負担を軽減するため、会社から委託を受けた第三者が、社債権者による社債の管理の補助を行う制度(社債管理補助者制度)を創設する。

○ 企業買収に関する手続の合理化を図るため、株式会社が他の株式会社を子会社化するに当たって、自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度を創設する。

2.2014年「会社法改正」の狙い

コーポレート・ガバナンスの強化及び親子会社に関する規律等の整備等を図る。

日本企業に対する内外の投資家からの信頼が高め,日本企業に対する投資が促進され,日本経済の成長に大きく寄与する。

3.コーポレート・ガバナンスの強化

(1) 社外取締役の機能の活用

取締役会の業務執行者に対する監督機能を強化するために,社外取締役をより積極的に活用する。

①監査等委員会設置会社制度の創設

現行法における監査役会設置会社及び委員会設置会社(改正後の名称は,指名委員会等設置会社)に加えて,監査等委員会設置会社制度が創設された

この制度は,3人以上の取締役から成り,かつ,その過半数を社外取締役とする監査等委員会が監査を担うとともに,業務執行者を含む取締役の人事に関して株主総会における意見陳述権を有する。

②社外取締役等の要件の厳格化

株式会社又は子会社の業務執行者等に加え,親会社の業務執行者等及び兄弟会社の業務執行者等や,その株式会社の業務執行者等の近親者も,その株式会社の社外取締役等となることができない。

③ 社外取締役を置くことが相当でない理由の説明

社外取締役を置いていない上場会社等の取締役は,定時株主総会において,社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。

(2) 会計監査人の独立性の強化

会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権を有する機関を,取締役又は取締役会から監査役又は監査役会に変更する。

4. 親子会社に関する規律の整備

(1) 多重代表訴訟制度の創設

完全親会社の株主を保護するため,一定の要件の下で,完全親会社の株主が,その完全子会社の取締役等の責任を追及する制度(多重代表訴訟制度)が創設された。

(2) 組織再編の差止請求制度の拡充

合併等の組織再編における株主を保護するため,通常の組織再編についても,株主は,一定の要件の下,組織再編の差止めを請求することができる。

(3) 詐害的会社分割によって害される債権者の保護規定の新設

詐害的会社分割(分割会社が,承継会社に債務の履行の請求をすることができる債権者(承継債権者)と,当該請求をすることができない債権者(残存債権者)を恣意的に選別した上で,承継会社に優良事業や資産を承継させるなどする会社分割)が行われた場合に,残存債権者の保護を直接的かつ簡明に図るために,分割会社が残存債権者を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,債務の履行を請求することができる。

5.キャッシュ・アウト法制の整備

総株主の議決権の90%以上の議決権を有する株主(特別支配株主)が、対象会社の承認(取締役会決議)を受けた場合には、他の株主全員に対し、その有する株式の全部を売り渡すことを請求できる

 施行日 平成27年5月1日

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