企業コンプライアンスの進展…会社法と金融商品取引法による義務化

1.企業におけるコンプライアンス=法令遵守活動の進展

企業内におけるコンプライアンス=法令遵守活動が重要になってきた。平成バブルのはじけた後は、利潤を出すための経営コストの削減で「間接部門」の総務や法務部が人員削減してきたが、これからはここにも優秀な人材を入れて行かざるを得なくなり、欧米のように社内弁護士も増加傾向にある。

法科大学院の設定に見られるように、弁護士がせいぜい500人ずつ増加するのでなく、その数倍規模で増加して法律の専門家が増え、社会の秩序が、伝統や慣習でなくて、法で解決する時代が本格的にやってくるであろう。

弁護士を金銭的にも利用しやすように法テラスが全国の裁判所近辺にできている。

また、企業が法令違反行為をしているときは、労働者による内部告発の保護を図る法律である公益通報者保護法もできた。

これからさらに、企業活動の適法性=コンプライアンス(compliance)経営がその企業にとって、かってヒートアップした環境保護活動と同じように重要性を増してくるであろう。

企業でも、文書の管理ばかりでなく、電子メールの保存、電子帳簿の保存、e-文書法の活用等で記録を正確にとってコンプライアンスの透明性を図る必要が出てきている。

2.コンプライアンス経営=市場存続条件

このように企業内における法令遵守活動がいわば社会通念として重要になってくると、コンプライアンス経営ができない会社は市場から完全に閉め出される時代になったといえよう。

動きとして、コンプライアンス研修の活発化やコンプライアンス資格取得等も盛んになってきている。

会社法や金融商品取引法(J-SOX法)等の下での法令を遵守した経営、財務書類の詳細で正確な作成、独禁法の遵守など企業と法との関わりは密接不可分になっている。

3.内部統制…業務の適正を確保する体制の法制化

会社法で規定されている「業務の適正」とは、違法行為や不正、ミスやエラーなどが行われることなく、組織が健全かつ有効・効率的に運営されるよう各業務で所定の基準や手続きを定め、それに基づいて管理・監視・保証を行うことを意味する。

コンプライアンス体制より広く、情報管理・危機管理も含まれている。内部統制システムともいう。

2006年6月に成立した金融商品取引法いわゆる日本版SOX法では

「当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制」

という概念を新たに用いている。

当該体制の整備は、会社の業務に関する重要な決定であるから、取締役の過半数で決定し、各取締役に委任することはできない(348条2項・3項4号)。

取締役会設置会社では、取締役会でこれを決定せねばならず(362条4項6号)、大会社である取締役会設置会社では、その決定が義務付けられている(同条5項)。

委員会設置会社では、決定内容が少し異なり、執行役の業務執行の適正確保という内容になる(416条1項1号ホ)。また、大会社か否かにかかわらず決定が義務づけられる(416条2項)。

それぞれ、条文上は「業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」とあるように、具体的な内容は法務省令(会社法施行規則)に委任されている。

◆「法務省令で列挙されている内容」

・取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制

・損失の危険の管理に関する規程その他の体制

・取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

・使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

・当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制 (会社法施行規則98条、100条)

(委員会設置会社では若干内容が異なる。) この他、会社の機関構成によって若干異なる。

◆監査役設置会社以外では、 取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制を含むものとする。

監査役設置会社では、

・監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項

・前号の使用人の取締役からの独立性に関する事項

・取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制

・その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

を含むものとする。

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