(株)ディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーション事業での著作権法・薬機法等違反(2017調査報告書公表)

1.不祥事の導火線

「DeNA・守安社長が語る ベンチャー2社買収の狙い 日経新聞 2014年10月1日 モバイルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は1日、インターネットなどから記事を抽出して利用者に提供するキュレーションサービスを始めると発表した。」

2.株価の急落

dena stock price 20161201

(会社四季報onlineより引用)

3.謝罪記者会見 2016年12月7日

・ディーエヌエ、南場会長「ゼロから会社を作り直す気持ち‥‥ヘルスケア情報のキュレーション(まとめ)サイト「WELQ」などで根拠が不明確な記載が相次ぎ、全10のサイトの記事を非公開にした経緯を説明した。‥‥守安社長「メディア事業への認識甘かった」‥‥

なお、出席したのは、上記の2名の他は経営企画本部長の小林賢治で、事業責任者である村田マリ・中川綾太郎など、キュレーションメディアの制作現場に携わる責任者は、不在であった。

4.第三者委員会「報告書」公表 2017年3月13日(一部引用)

コンプライアンス・リスク管理の観点からのみ引用する。

なお、会社のIR情報サイトでは見つかりにくくなった。

https://dena.com/jp/ir/

・著作権法違反

「DeNAが運営していた10サイトの記事37万6,671件についてサンプル調査を行った結果、統計学的には、複製権/翻案権侵害の可能性がある記事の出現率の推計値は1.9~5.6%の範囲内であり、その可能性がないとは言えない記事の同推計値は0.5~3.0%の範囲内であった。これらの記事の一部は、同時に、公衆送信権侵害、同一性保持権侵害又は氏名表示権侵害となっている可能性もある。‥‥」

「DeNAが運営していた10サイトの記事に掲載されていた画像472万4,571個のうち、74万7,643個については、‥‥複製権侵害の可能性がある。これらの画像は、同時に、公衆送信権侵害又は氏名表示権侵害となっている可能性もある。」

「‥‥DeNAが運営していた10サイトには、(i)文章自体には著作物性が認められないものの、他の記事のコピー&ペーストがなされていると考えられるもの、(ⅱ)出典が不明瞭で、引用方法として不適切であるものなど、倫理的に問題のある記事が掲載されていた。」

・薬機法、医療法又は健康増進法違反

「‥‥WELQの記事19本について調査したところ、‥‥薬機法 について8本、医療法について1本、健康増進法について1本であった。‥‥」

「 原因・背景分析‥‥リスク管理が出来ていなかったこと等」

上記への答えとしては、「 再発防止策‥‥リスク感覚の醸成‥‥」

なお、弁護士  福井健策が自分の事務所サイト (骨董通り法律事務所 for the Arts)で実物用いた「著作権侵害の記事はどれだけあったか」を抑制の効いた文章で検証している。

5.DeNAのコンプライアンス態勢・リスク管理の見直し

代表取締役を従来の1名から2名に変更するとともに、創業者である会長が代表取締役に復帰すること、取締役会による業務執行に関する監視を強化すること、コンプライアンス・管理体制を強化すること、役職員の抜本的な意識改革を行っていく方針をプレスリリースで発表した。

次の「格付け委員会」の評価も参照されたい。久保利、國広その他弁護士意見、多面的な評価で非常に参考になる。

http://www.rating-tpcr.net/result/#13

なお、最後にこの不祥事の根深さを指摘して終わりたい。

本件のDeNAのキュレーション問題は、

インターネットのプラットホームの問題、

記事の委託先の管理の問題、

マスメディアの創業者賛美による売り上げ第一主義、

視聴率第一経営姿勢の問題(ワタミの過重労働自殺問題なども同じ)、

企業買収(M&A)事業拡大におけるPMI (Post Merger Integration)問題、

取引先決定の公正さの問題、

不祥事における責任の取り方の問題、

社会的損害に対する無責任、

著作権法の理解不足、軽視と法規範としての2次的扱い、

コンプライアンス違反があったのであれば、本サイトの私の論考にあるように、正面からコンプライアンスの適正復活に心血を注ぐべきで、そこでは職業倫理が中心になるとの問題などがあろう。

もちろん、リスクマネジメントの問題として、

3つのデフェンスライン、

ERM2017の企業への取り込み

などはこの会社などの最大の喫緊問題だ。

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