1.パワーハラスメントの定義はどうなっているのか。
(1)厚生労働省の考え
厚生労働省の定義では、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(※)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」となっている。
またこれには、「上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。」とされている。
職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」は労働者の尊厳や人格を侵害する許されない行為であり、早急に予防や解決に取り組むことが必要な課題である。
企業は、職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」による職場の生産性の低下や人材の流出といった損失を防ぐとともに、労働者の仕事に対する意欲を向上させ、職場の活力を増すためにも、この問題に積極的に取り組むことが求められる。
(2)パワーハラスメントは国際的に通用しない言葉
Power Harassment という言葉はない。和製英語であるが、外人は何のことかわからないであろう。恥かしい限りである。若手労働法学者からも厳しい批判がある。
(3)職場でのいじめ
Workplace Bullying が一般的でないか。ワークプレスブリング でどうであろうか。bullying が集団的になるとMobbingになる。
若しくは、Abuse of Authority(権限の乱用)も近い概念であろう。
Harcèlement Moral はフランス語で仏労働法の定めがある。モラル・ハラスメントMoral Harassmentも真似した和製英語だ。
Maternity Harassmentも同様、Pregnancy Discriminationのこと。
(4)労働施策総合推進法における「優越的言動問題」という定義
第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等
(雇用管理上の措置等)
第三〇条の二
① 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
② 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
③ 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。
2.どのようなパワハラ類型があるのか。
類型 具体的行為
(1)身体的な攻撃 暴行・障害
(2)精神的な攻撃 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
(3)人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視
(4)過大な要求 業務上明らかに不要なことなどを要求
(5)過小な要求 仕事を与えない等
(6)個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること
3.パワーハラスメント防止策はどうなっているのか。
この問題を予防・解決するための労使の取組については、まず、企業として職場のパワーハラスメントはなくすべきという方針を明確に打ち出すべきである。
予防するために、○トップのメッセージ、○ルールを決める、○実態を把握する、○教育する、○周知する。
解決するために、○相談や解決の場を設置する、○再発を防止する
※厚生労働省労働基準局労働条件政策課賃金時間室 平成24年1月30日参照