1.労働法務とコンプライアンス
労働現場におけるコンプライアンスを遵守するためには、「労働三法並びに労働契約法等の関連法規」の理解が不可欠であろう。
まずは、人権としての従業員の労働基本権として、その内容を把握しそのうえで、労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)と労働契約法の基本法をしっかりと理解することが大切である。
2.労働基準法の基本21項目
1 労働基準法の適用範囲
2 均等待遇(法第3条)
3 男女同一賃金の原則(法第4条)
4 労働契約について
5 労働者の解雇 ※有期労働契約の締結及び更新・「雇止め」に関する基準
6 退職時の証明(法第22条)
7 賃金
8 労働時間
9 休 日(法第35条)
10 深夜業
11 割増賃金(法第37条)
12 休 憩(法第34条)
13 労働時間、休日と休憩の適用除外(法第41条)
14 年次有給休暇(法第39条)
15 年少者
16 女性と妊産婦(妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性)
17 就業規則
(1)作成と届出(法第89条)
(2)作成の手続(法第90条)
(3)就業規則に定めなければならない事項
(4)法令・協約違反の事項等(法第92条第1項、第93条)
18 法令、就業規則等の周知
19 書類の作成、保存
20 労働者の過半数代表の要件
21 監督機関への申告(法第104条)
※有給5日義務化等法案(平成28年第189回国会提出審議)
3.労働組合法の基本6項目
1.目的
2.労働組合
3.労働者
4.不当労働行為(第7条)
5.労働協約(第3章)
6.労働委員会
4.労働関係調整法
労働関係調整法は「労働組合法と相俟つて、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて経済の興隆に寄与することを目的とする」法律(昭和21年法律第25号)である。あっせん、調停、仲裁のそれぞれについて、適用場面を考慮して理解する。
5.労働契約法
1.労働契約法は、労働契約に関する基本的な事項を定めた新法で、2007年12月5日公布され、2008年3月1日施行された。
次の重要な内容を持つ。
2.労働契約の原則
3.安全配慮義務
4.合意の原則
5.労働契約と就業規則
6.権利の濫用
7.期間の定めのある労働契約
6.新しい労働関係の重要法
1.男女雇用機会均等法(1986年施行、1997年改正)
2.公益通報者保護法
3.労働者派遣法
4.パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
5.最低賃金法(1959年制定)
6.労働安全衛生法(1972年制定) ストレスチェックの実施等義務。施行日 平成27年12月。
7.労災保険法(1947年制定)
8.育児・介護休業法(1999年施行、2002年改正)
7.コンプライアンス規程とコンプライアンスマニュアルの作成
これらは、労働現場でのツールになっていよう。
その場合に、 「コンプライアンス」はなぜ重要か、コンプライアンス態勢の手順、労働三法等とコンプライアンスで特に外せない規則などを確認する。
また、労働法コンプライアンスのホットテーマがいくつも実務上はある。
例えば、サービス残業等に対する経営者の労働環境配慮義務があるが、その実態は「労働者に残業申請を行わせない」・「職場外での仕事の強制」など依然として多くの問題があり労働基準監督署による是正勧告なども相変わらず多い。
訴訟になったものも多数ある。
8.労働法上の最新判例
例えば、INAXメンテナンス事件(最高裁判決H23.4.12)、日本IBM事件(最高裁判決H22.7.12)等の判例知識は労働コンプライアンスで不可欠であろう。
パワーハラスメント、セクシャル・ハラスメント、マタハラ等のハラスメント防止も重要である。
また、解雇法理の展開は日本独自のものがあり、そのうえで、配置転換など不利益変更などの労働条件実務もじる必要があろう。
さらに、配置転換や出向・転籍問題と.問題社員への対応方法は実務上は非常に大切である。
個人情報の漏えい関係でもこれまでと違って、マイナンバー法は9つの厳しい刑罰を定め、個人情報保護法の間接罰でなく直接罰であることに留意する必要がある。